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  • ステロイドで筋肉はつく?|プレドニンとアナボリックステロイドの違いを薬剤師が解説

    ステロイドで筋肉はつく?|プレドニンとアナボリックステロイドの違いを薬剤師が解説

    筋肉を大きくするために「ステロイドを使う」という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

    一方で、病院ではプレドニンなどのステロイド薬が処方されています。

    そのため、「プレドニンを飲みながら筋トレをしたら筋肉が付きやすくなるのでは?」と思ったことがある方もいるかもしれません。

    しかし、ここには大きな誤解があります。

    筋肥大を目的として使われるステロイドと、病院で処方されるプレドニンは、同じ“ステロイド”でも作用は大きく異なります。

    今回は、プレドニンとアナボリックステロイドの違い、筋肥大のメカニズム、副作用について薬剤師が解説します。

    ①プレドニンで筋肉はつくのか?

    結論:筋肉はつかない

    むしろ長期間使用すると筋肉量が減少することもあります。

    ステロイドの定義

    ステロイドとは、ステロイド骨格(シクロペンタノヒドロフェナントレン環)を持つ物質の総称です。

    副腎皮質ホルモンや性ホルモンは、いずれもコレステロールから生合成されるステロイドホルモンです。

    つまり、「ステロイド」は薬の名前ではなく、共通した構造を持つ物質のグループ名です。

    プレドニンは何のステロイド?

    プレドニン(プレドニゾロン)は、副腎皮質ホルモンの一種である糖質コルチコイドに分類されます。

    強い抗炎症作用や免疫抑制作用を持ち、さまざまな疾患の治療に用いられます。

    • アレルギー
    • 自己免疫疾患
    • 炎症性疾患

    なぜ筋肉が減ることがあるのか

    糖質コルチコイドは、体内で糖新生を促進します。

    糖新生とは、アミノ酸などから新たにブドウ糖を作り出す仕組みです。

    その際、糖質コルチコイドは筋タンパク質の分解を促進し、放出されたアミノ酸を糖新生の材料として利用します。

    このため、プレドニン(プレドニゾロン)を飲みながら筋トレをしても、筋肥大を目的とした薬としては適していません。

    長期間・高用量で使用すると、ステロイドミオパチーと呼ばれる筋力低下や筋萎縮を生じることもあります。

    ではなぜ「筋肉がつくステロイド」が存在するのか?

    実はステロイドには複数の種類があり、筋肥大に関係するのはプレドニンとは別のステロイドです。

    次にその違いを見ていきましょう。

    ② 筋肥大に使われるステロイドとは?

    前項で解説したように、プレドニン(プレドニゾロン)は糖質コルチコイドであり、筋肉を増やす薬ではありません。

    では、筋肥大を目的として使われる「ステロイド」とは何なのでしょうか。

    まず知っておきたいのは、ステロイドにはさまざまな種類が存在するということです。

    副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドがあり、性ホルモンには、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロンがあります。

    このうち、筋肥大に大きく関わるのがアンドロゲンです。

    筋肉を増やすのはアンドロゲン

    アンドロゲンとは男性ホルモンの総称で、その代表がテストステロンです。

    テストステロンは男性らしい体つきの形成に関与するだけでなく、筋肉や骨の発達を促進する作用を持っています。

    そのため、筋トレを行う人の間では「筋肉を増やすホルモン」としてよく知られています。

    つまり、筋肥大に関与するのはプレドニンのような糖質コルチコイドではなく、アンドロゲン系のステロイドなのです。

    アナボリックステロイドとは?

    アナボリックステロイド(蛋白同化ステロイド)は、テストステロンをもとに開発された薬剤です。

    筋肉を作る作用(タンパク同化作用)を強めるように構造が改変されており、筋肉や筋力の増加を目的として使用されることがあります。

    実際にアナボリックステロイドには筋肥大作用が存在します。

    しかし、その一方で重篤な副作用も報告されており、医療目的以外での使用には大きなリスクが伴います。

    では、アナボリックステロイドはどのような仕組みで筋肉を増やすのでしょうか。

    次に、その筋肥大のメカニズムについて見ていきます。

    ③筋肥大のメカニズム

    アナボリックステロイドはどうやって筋肉を大きくするのか

    アナボリックステロイドによる筋肥大は、単純に筋肉へ栄養を送り込むことで起こるわけではありません。

    筋細胞の中では、ホルモン受容体や遺伝子発現を介した複雑な仕組みが働いています。

    アナボリックステロイドは、まず筋細胞内のアンドロゲン受容体に結合します。

    活性化された受容体は細胞核へ移動し、筋タンパク合成に関わる遺伝子の発現を促進します。

    さらに、筋肥大の司令塔とも呼ばれるmTOR経路を活性化することで、筋タンパク合成を強力に促進します。mTORは細胞内で「筋肉を作れ」という指令を出す重要なシグナル経路です。

    また、アナボリックステロイドは衛星細胞(サテライトセル)の活性化にも関与すると考えられています。

    衛星細胞は筋線維の修復や成長を担う細胞であり、その活性化によって筋肥大が促進されます。

    このようにアナボリックステロイドは、筋タンパク合成の増加と衛星細胞の活性化を通じて、筋力増加や筋肥大をもたらします。

    なぜ筋肥大効果が強くなるのか

    通常の筋トレでも、筋肉に負荷が加わることでmTORが活性化し、筋タンパク合成が促進されます。

    一方、アナボリックステロイドを使用した場合は、生理的範囲を超える強いアンドロゲン受容体刺激が加わることで、筋タンパク合成がさらに促進されます。

    そのため、ナチュラルな状態と比べて筋肥大のスピードや筋量の増加幅が大きくなり、通常では到達が難しいレベルの筋肥大が起こることがあります。

    ④アナボリックステロイドの副作用

    筋肥大効果が強い一方で、アナボリックステロイドにはさまざまな副作用が報告されています。

    ホルモンバランスの乱れ

    アナボリックステロイドを外部から投与すると、体内では「十分な男性ホルモンが存在する」と判断されます。

    その結果、脳の視床下部や下垂体からのホルモン分泌が抑制され、自身のテストステロン産生が低下します。

    そのため、以下のような副作用が起こることがあります。

    ・精巣萎縮
    ・男性不妊
    ・性欲低下
    ・勃起機能の低下

    筋肉を大きくするために使用した結果、本来のホルモン機能に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

    女性化乳房

    テストステロンの一部は体内でエストロゲン(女性ホルモン)へ変換されます。

    テストステロン

    エストロゲン

    女性化乳房

    その結果、男性であっても乳房が発達する「女性化乳房」が起こることがあります。

    症状が進行すると自然には改善せず、手術が必要になる場合もあります。

    肝障害

    アナボリックステロイドの中でも、経口剤では肝障害が問題になることがあります。

    軽度の肝機能異常から、黄疸や薬物性肝障害までさまざまな報告があります。

    特に長期間使用や高用量使用では注意が必要です。

    心血管イベント

    近年、アナボリックステロイドによる心血管系への影響も問題視されています。

    報告されている主なものとして、これらの症状があります。

    ・高血圧
    ・脂質異常症
    ・心筋梗塞
    ・脳卒中

    筋肉は大きくなっても、血管や心臓への負担は増加する可能性があります。

    精神症状

    アナボリックステロイドは精神面にも影響を与えることがあります。

    代表的なものとして、次のような精神的副作用が見られる可能性があります。

    ・攻撃性の増加
    ・イライラ
    ・気分の変動
    ・依存

    海外では、いわゆる「ロイドレイジ(roid rage)」と呼ばれる攻撃性の増加が話題になることもあります。

    実際の報告例

    アナボリックステロイドによる健康被害は、医学論文や症例報告でも数多く報告されています。

    例えば、過去にこれらが報告されています。

    ・若年者における心筋梗塞
    ・重度の肝障害
    ・拡張型心筋症や心不全
    ・突然死

    もちろん全ての使用者に起こるわけではありませんが、「若いから安全」というわけではありません。

    また、スポーツ庁も筋肉増強剤による健康被害や個人輸入の危険性について注意喚起を行っています。

    参考:スポーツ庁「筋肉増強剤を知る」

    https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/list/jsa_00072.html


    薬剤師としての考え

    筋肥大を目的としたアナボリックステロイドの使用は、高いリスクを伴います。

    実際に肝障害や心血管イベント、不妊、精巣萎縮などの副作用が報告されており、医療目的以外での使用は推奨されません。

    筋肉を大きくする効果は確かに存在しますが、その代償として将来的な健康被害を招く可能性があります。

    日本では筋肥大のみを目的としてアナボリックステロイドを処方することは認められていません。

    薬剤師として筋肥大を目的とした安易な使用はおすすめできません。

    ⑤ステロイドで筋肥大した後は?

    やめれば副作用はなくなるのか?

    アナボリックステロイドを使用して筋肉量を増やした後、「筋肉が付いたら使用を中止すれば、副作用だけ避けられるのでは?」と考える人もいるかもしれません。

    しかし実際には、そう単純な話ではありません。

    アナボリックステロイドによる副作用は、長期間使用した場合だけに起こるものではなく、短期間の使用でも生じる可能性があります。

    また、使用を中止した後もホルモンバランスの乱れが続くことがあり、回復までに長い時間を要するケースも報告されています。

    そのため、「少しだけ使ってやめれば安全」と考えるのは危険です。

    筋肉はそのまま維持できるのか?

    また、筋肉についても、ステロイド使用中に得られた状態を永久に維持できるわけではありません。

    使用を中止すると、筋タンパク合成能やホルモン環境は徐々にナチュラルな状態へ戻っていきます。

    トレーニングを継続していても、筋量は遺伝的要因やホルモン環境に大きく左右されるため、時間の経過とともに本来の範囲へ近づいていくと考えられています。

    マッスルメモリーとの関係

    一方で、近年はアナボリックステロイドによって増加した筋核(myonuclei)が長期間残存し、再びトレーニングを行った際に筋肉が付きやすくなる「マッスルメモリー」に関与する可能性が指摘されています。

    ただし、この現象がヒトでどの程度続くのか、またどれほど有利に働くのかについては、まだ十分に解明されていません。

    そのため、「一度だけ使って筋肉を手に入れれば、その後も有利な状態が続く」と断言できる段階ではありません。

    筋肉だけを手に入れることはできない

    少なくとも、アナボリックステロイドは「筋肉だけ手に入れて、副作用は避けられる」という都合の良い方法ではありません。

    筋肥大という大きなメリットがある一方で、その裏にはホルモンバランスの乱れや健康被害のリスクが存在します。

    使用を検討する際には、筋肉だけでなく、その代償についても理解しておく必要があるでしょう。

    ⑥まとめ

    「ステロイド」と一言で言っても、その種類によって作用は大きく異なります。

    プレドニン(糖質コルチコイド)とアナボリックステロイドは、どちらもステロイド骨格を持つ物質ですが、筋肉に対する作用は正反対です。

    プレドニンは筋タンパクの分解を促進し、長期間使用では筋力低下や筋萎縮を起こすことがあります。一方、アナボリックステロイドは筋タンパク合成を強力に促進し、筋肥大を引き起こします。

    また、アナボリックステロイドの中には個人輸入で入手できるものもあります。しかし、個人輸入された医薬品は品質や成分が保証されているとは限りません。

    さらに、副作用が生じた場合でも、国内で承認された医薬品のような救済制度の対象にならない可能性があります。

    筋肥大という魅力的な効果がある一方で、その裏にはホルモンバランスの乱れや心血管イベント、不妊などのリスクが存在します。

    筋肉を大きくしたいと考える場合は、安易に薬へ頼るのではなく、適切なトレーニングや栄養管理を継続することが最も安全で確実な方法と言えるでしょう。

  • ハイチオールはなぜシミや肌荒れに使われる?|L-システインの薬理作用を薬剤師が解説

    ハイチオールはなぜシミや肌荒れに使われる?|L-システインの薬理作用を薬剤師が解説

    医療用のハイチオール(L-システイン)は、湿疹やじん麻疹、ニキビなどに用いられることがあります。

    また、ドラッグストアでは「シミ」「そばかす」「肌荒れ」などを目的としたハイチオール製品も販売されています。

    処方薬としても一般用医薬品としても、「肌によい成分」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。

    では、L-システインはなぜ肌に良いと言われているのでしょうか。

    今回は、L-システインの薬理作用をもとに、その働きを薬剤師の視点から少し深掘りして解説します。

    ①医療用とOTCの違い

    ハイチオールの主成分であるL-システインは、医療用医薬品と一般用医薬品(OTC)の両方で使用されています。

    しかし、同じL-システインを含む製品であっても、配合成分や使用目的、適応には違いがあります。

    まずは医療用とOTCの違いをみてみましょう。

    主成分の違い

    医療用のハイチオール錠の主成分はL-システインです。

    一方、一般用医薬品のハイチオールCプラスEXには、L-システインに加えてビタミンCやパントテン酸カルシウムなどが配合されています。

    そのため、OTCではL-システイン単独ではなく、複数の成分による総合的な作用が期待されています。

    適応・効能の違い

    医療用ハイチオールは、主に以下のような疾患に対して使用されます。

    • 湿疹
    • 中毒疹
    • 薬疹
    • じん麻疹
    • 尋常性ざ瘡
    • 多形滲出性紅斑
    • 放射線障害による白血球減少症

    一方、ハイチオールCプラスEXでは、以下のような効能・効果が認められています。

    • しみ、そばかす・日焼け等の色素沈着症
    • 全身倦怠
    • 二日酔
    • にきび、湿疹、じんましん、かぶれ、くすりまけ

    このように比較すると、医療用は皮膚疾患などの治療を目的としているのに対し、OTCではシミやそばかすなど、美容やセルフケアに関連する効能も含まれていることが分かります。

    目的の違い

    両者の最も大きな違いは使用目的です。

    医療用ハイチオールは、医師の診断のもとで疾患を治療することを目的として使用されます。

    一方、OTCのハイチオールは、シミや肌荒れの改善、全身倦怠の改善など、セルフケアを目的として使用されることが多い製品です。

    そのため、同じL-システインを含む製品であっても、「病気の治療」と「美容・セルフケア」という違いがあると考えると分かりやすいでしょう。

    では、なぜL-システインは湿疹やニキビだけでなく、シミや肌荒れなどにも用いられているのでしょうか。

    次に、L-システインの薬理作用について詳しくみていきます。

    ②L-システインの主な作用

    では、L-システインは体内でどのような働きをしているのでしょうか。

    SH基(チオール基)ならではの作用

    L-システインの最大の特徴は、構造中に存在するSH基(チオール基)です。

    このSH基は非常に反応性が高く、体内ではさまざまな酸化還元反応に関与しています。

    L-システインは「SH供与体」とも言われますが、これはSH基がプロトン(H⁺)や電子(e⁻)を与えて、相手を還元する働きを持つためです。

    還元とは、簡単にいうと酸化された物質を元の安定した状態へ戻す反応です。

    私たちの体内では、紫外線やストレス、喫煙などの影響によって活性酸素が発生します。活性酸素は細胞を酸化させ、さまざまなダメージの原因となります。

    L-システインはSH基を介してこれらの酸化反応に対抗し、細胞を酸化ストレスから守る働きを持っています。

    また、SH基同士は結合して「ジスルフィド結合(-S-S-)」を形成することができます。

    この結合は、髪や爪の主成分であるケラチンの立体構造を維持するうえで重要な役割を担っています。

    L-システインは単なるアミノ酸ではなく、SH基による酸化還元反応を通じて生体機能を支える重要な成分なのです。

    グルタチオン合成への関与

    L-システインの重要な役割はSH基による直接作用だけではありません。

    体内では、L-システインはグルタミン酸、グリシンとともに「グルタチオン」の材料になります。

    グルタチオンは、生体内に存在する代表的な抗酸化物質のひとつです。

    活性酸素を除去して細胞を守るだけでなく、薬物や有害物質を無毒化する解毒反応にも関与しています。

    例えば肝臓では、グルタチオンが有害物質と結合して体外へ排出しやすくする「抱合反応」を行っています。

    また、紫外線や加齢によって増加する酸化ストレスに対しても重要な防御機構として働いています。

    つまり、L-システインは自身のSH基による作用に加えて、グルタチオンの材料になることで間接的にも抗酸化作用や解毒作用を発揮しているのです。

    エネルギー代謝への関与

    L-システインは美容成分として紹介されることが多い一方で、エネルギー代謝にも関与しています。

    L-システインに由来する硫黄は、体内で補酵素であるコエンザイムA(CoA)などの生体成分の構築にも利用されます。

    CoAは糖質や脂質の代謝において重要な役割を担っており、クエン酸回路をはじめとしたエネルギー産生経路で働いています。

    私たちが食事から摂取した栄養素をエネルギーへ変換するためには、CoAが欠かせません。

    そのためL-システインは、肌への作用だけでなく、生体のエネルギー代謝を支える成分でもあります。

    一般用医薬品で全身倦怠や疲労時の栄養補給が効能として挙げられている背景には、このような代謝への関与も関係していると考えられています。



    ③なぜL-システインは肌によいのか

    ここまで、L-システインの主な薬理作用について解説してきました。

    では、それらの作用はどのようにして肌への効果につながるのでしょうか。

    活性酸素や紫外線によるダメージを軽減する

    私たちの肌は日々、紫外線やストレス、喫煙などによって活性酸素にさらされています。

    活性酸素が増えすぎると、細胞が酸化され、シミや肌荒れ、老化の原因になることがあります。

    L-システインはSH基による抗酸化作用に加え、グルタチオンの材料となることで、体内の抗酸化システムを支えています。

    その結果、活性酸素によるダメージを軽減し、肌の細胞を守る働きが期待されています。

    メラニンの排出をサポートする

    シミの原因となるメラニンは、紫外線などの刺激によって産生されます。

    通常、メラニンは肌のターンオーバーによって徐々に排出されますが、加齢や生活習慣の乱れなどによってターンオーバーが低下すると、肌に蓄積しやすくなります。

    L-システインには皮膚の代謝をサポートし、ターンオーバーを正常化する働きがあるとされています。

    そのため、すでに作られたメラニンの排出を助けることで、シミやそばかすの改善につながると考えられています。

    解毒作用によって肌環境を整える

    L-システインはグルタチオンの材料となり、体内の解毒反応にも関与しています。

    グルタチオンは肝臓などで有害物質と結合し、体外へ排出しやすくする働きを持っています。

    肌トラブルの原因はさまざまですが、生体内の防御機構や解毒機能を支えることも、健康な肌を維持するうえで重要です。

    L-システインは、このような間接的な作用によっても肌環境の維持に貢献していると考えられています。

    健康な皮膚を構成する材料になる

    L-システインはアミノ酸の一種であり、皮膚や毛髪、爪などを構成するタンパク質の材料にもなります。

    また、SH基によって形成されるジスルフィド結合は、ケラチンの立体構造を維持するうえで重要な役割を担っています。

    このためL-システインは、抗酸化作用だけでなく、皮膚そのものを構成する成分としても重要な役割を果たしています。

    ただし、L-システインを服用したからといって、すぐにシミが消えたり肌がきれいになったりするわけではありません。

    肌のターンオーバーには時間がかかるため、効果を実感するまでには数か月程度かかることもあります。

    そのため、短期間での変化を期待するのではなく、継続的なケアの一つとして考えることが大切です。

    ④まとめ

    L-システインの作用の中心は、SH基(チオール基)による酸化還元反応です。

    また、グルタチオン合成にも関与することで、抗酸化作用や解毒作用を発揮し、肌の健康維持をサポートしています。

    その結果として、シミや肌荒れなどへの効果が期待されています。

    なお、L-システインは美容だけでなく、疲労回復や二日酔い対策、解毒機構にも関与する重要なアミノ酸です。

    アセトアミノフェン中毒時には、L-システインの誘導体であるアセチルシステインが解毒治療に用いられます。

    このようにL-システインは、美容成分としてだけでなく、生体内の抗酸化作用や解毒機構を支える重要なアミノ酸です。

    ハイチオールを理解する際は、「シミに効く成分」というだけでなく、その背景にある薬理作用にも注目してみると、より深く理解できるでしょう。

  • AGA薬物治療の基本|フィナステリド・デュタステリド・ミノキシジルを薬剤師が解説

    AGA薬物治療の基本|フィナステリド・デュタステリド・ミノキシジルを薬剤師が解説

    前回は「なぜハゲるのか?」という原因を解説しました。

    原因が分かれば、次に気になるのは「どうやって止めるのか?」ですよね。

    今回は、AGA(男性型脱毛症)に対する薬を使った治療について、薬剤師の視点でわかりやすく解説します。

    AGA(男性型脱毛症)は少しずつ脱毛が進んでいく疾患ですが、  適切な薬を使うことで進行を抑え、改善が期待できます。

    現在、治療の中心となるのは以下の3つです。

    ・フィナステリド  

    ・デュタステリド  

    ・ミノキシジル  

    それぞれ作用の仕組みが異なるため、正しく理解することが重要です。

    ①フィナステリドとは

    フィナステリド(先発品:プロペシア)は、AGA治療の基本となる内服薬です。

    ・作用機序  

    5α還元酵素(主にⅡ型)を阻害することで、  テストステロン → DHT(ジヒドロテストステロン)への変換を抑制します。

    ・なぜ効くのか  

    DHTは毛根に作用してヘアサイクルを乱す原因となるため、  その産生を抑えることで「抜け毛の進行を防ぐ」ことができます。

    ・ポイント  

    抜け毛の進行を抑制

    AGA治療の第一選択  

    ・副作用  

    性機能に関する症状(性欲低下、勃起機能低下など)  

    頻度は高くないとされていますが、気になる場合は医師に相談が必要です。

    5α還元酵素の種類と薬の違い

    テストステロンをDHTに変換する5α還元酵素にはⅠ型とⅡ型があり、それぞれ働く部位や、薬の作用範囲が異なります。


    AGAでは特にⅡ型の関与が大きいとされており、
    デュタステリドはⅠ型・Ⅱ型の両方を抑えることで、より広くDHTの産生を抑制します。

    デュタステリドとは

    デュタステリド(先発品:ザガーロ)はフィナステリドと同じくDHTを抑える薬ですが、作用点がより広いのが特徴です。

    ・作用機序  

    5α還元酵素Ⅰ型+Ⅱ型の両方を阻害

    ・なぜ効くのか  

    DHTの産生をより広く抑制できるため、フィナステリドより高い効果が示されている報告もあります。

    ・ポイント  

    抜け毛の進行を抑制(フィナステリドより強力)  

    フィナステリドで効果不十分な場合に選択されることがある

    ・副作用  

    性機能に関する症状(性欲低下、勃起機能低下など)

    頻度は高くないとされています。 

    ※前立腺肥大症治療薬であるアボルブも同じ成分(デュタステリド)です。

    ③ミノキシジルとは

    ミノキシジルは、発毛を促進する薬です。

    ドラッグストアなどでは、「リアップ」などの外用薬が販売されています。

    ・作用機序
    ATP感受性K⁺チャネルに作用して血管を拡張し、頭皮の血流を増加させます。
    また、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)など、発毛に関わる成長因子にも関与している可能性が示唆されています。 

    ・なぜ効くのか
    頭皮の血流が増加することで、毛根に酸素や栄養が届きやすくなり、発毛を促進します。

    ・ポイント  

    発毛促進を目的とした治療
    外用薬が一般的(ロニテンなどの内服は医師管理下)

    ・副作用  

    頭皮のかぶれ・かゆみ(外用)  

    動悸・むくみ(内服)

    ・ミノキシジルの初期脱毛について
    治療開始後、一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」がみられることがあります。
    これは乱れていたヘアサイクルが変化する過程で起こると考えられており、多くは一時的なものです。

    なぜ併用すると効果的なのか

    これらの薬は、それぞれ役割が異なります。

    ・フィナステリド/デュタステリド → 抜け毛の進行を抑える
    ・ミノキシジル → 発毛を促進する

    つまり、「抜け毛を抑える+発毛を促す」を同時に行うことで、より高い効果が期待できます。
    そのため、実際のAGA治療では併用されることも多いです。

    ④治療の注意点

    ・効果が出るまで3〜6ヶ月かかる

    ・途中でやめると元に戻る可能性がある

    ・効果や副作用には個人差がある

    自己判断ではなく、医師の指示のもとで継続することが重要です。

    ➄どこで治療を始める?

    AGA治療に興味はあっても、「どこで始めればいいのか分からない」という方も多いと思います。

    最近では、オンライン診療を利用することで、通院せずに、自宅から治療を始めることも可能です。

    次の記事では、オンライン診療の流れやクリニックの選び方、費用の目安について詳しく解説します。

    AGAは早めに治療を開始するほど、改善を実感しやすいとされています。

  • 人はなぜハゲるのか?原因・種類・AGAの仕組みを薬剤師が解説

    人はなぜハゲるのか?原因・種類・AGAの仕組みを薬剤師が解説

    「最近、抜け毛が増えてきた」  

    「おでこが広くなってきた気がする…」  

    このような髪の悩みを感じている方は少なくありません。

    「ハゲる原因」と聞くと、頭皮の汚れや血行不良を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

    また、家族(特に父親)の髪の状態を見て、「自分も将来そうなるのでは」と不安に感じたことがある方もいるかもしれません。

    そのため、ある程度の年齢になったら仕方ないと考える人もいれば、シャンプーを変えれば改善するかもと思う方もいます。

    しかし実際には、成人男性の薄毛の多くは  「AGA(男性型脱毛症)」が原因とされています。

    つまり、頭皮ケアだけでは改善が難しいケースも多いのです。

    ただし、薄毛は正しい知識と対策によって、  進行を抑えたり改善が期待できる場合もあります。

    薄毛の原因は一つではなく、正しく理解することが重要です。

    この記事では、薄毛の本当の原因とその仕組みについて、  薬剤師の視点からわかりやすく解説していきます。

    薄毛は一つの原因で起こるものではなく、さまざまな要因が関係しています。

    主な原因には、以下のようなものがあります。

    ・男性ホルモン  

    ・遺伝  

    ・ストレス  

    ・血行不良  

    ・栄養不足  

    ・睡眠不足  

    ・喫煙  

    ・頭皮環境の悪化  

    ・加齢  

    これらが単独、または複数組み合わさることで、抜け毛や薄毛が進行していきます。

    最も大きな原因は「男性ホルモン(DHT)」

    数ある原因の中でも、特に大きな影響を与えるのが、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)です。

    もともと体内にある男性ホルモン(テストステロン)が、「5α還元酵素」という酵素の働きによってDHTに変換されます。

    このDHTが毛根に作用すると、髪の成長期が短くなり、髪が太く長く育つ前に抜けてしまう状態(ヘアサイクルの乱れ)を引き起こします。

    その結果、細く短い毛が増え、薄毛が進行していきます。

    この仕組みによって進行するのが、いわゆるAGA(男性型脱毛症)です。

    遺伝によってDHTの影響が変わる

    なお、同じ量のDHTがあっても、毛根の「感受性(遺伝)」によって影響の受けやすさは人によって異なります。

    つまり、「遺伝=ハゲる」というわけではなく、「DHTの影響を受けやすい体質かどうか」に差があると考えられています。

    また、毛根へのDHT感受性は、母親の遺伝の影響が大きい可能性が指摘されており、家族歴を確認する際には、母方の家系の髪の毛の状態が参考になるとされています。

    テストステロンとDHTの違いを簡単にまとめると以下の通りです。

    生活習慣も薄毛に影響する

    DHTだけでなく、以下のような生活習慣も薄毛に関係しています。

    ・ストレス → 血流低下や自律神経の乱れ  

    ・栄養不足 → 髪の材料不足(タンパク質・亜鉛など)  

    ・睡眠不足 → 成長ホルモンの分泌低下  

    ・喫煙 → 血管収縮による血行不良  

    これらは主な原因ではないものの、薄毛を進行させる要因になると考えられています。

    「ハゲる」と一言で言っても、原因によっていくつかの種類があります。

    その中でも、成人男性の薄毛の多くはAGA(男性型脱毛症)が原因とされていますが、それ以外の脱毛症も存在します。

    代表的なものは以下の通りです。

    AGA(男性型脱毛症)

    男性に最も多くみられる脱毛症で、DHTの影響によって進行するのが特徴です。  

    生え際や頭頂部から徐々に薄くなっていきます。

    円形脱毛症

    自己免疫の異常により、円形または楕円形に突然髪が抜けるのが特徴です。

    休止期脱毛

    出産や強いストレス、体調不良などをきっかけに、一時的に抜け毛が増える状態です。

    牽引性脱毛症

    髪を強く引っ張る習慣(ポニーテールなど)によって起こります。

    脂漏性脱毛症

    脂漏性皮膚炎などに伴い、頭皮環境が悪化することで脱毛が起こることがあります。

    薬剤性脱毛

    抗がん剤などの薬の影響で起こる脱毛です。  

    ※薬の種類によっては一時的なことが多く、回復するケースもあります。

    びまん性脱毛症

    頭皮全体の髪が均一に薄くなり、ボリュームが減少し、分け目が目立ち、地肌が透けて見えるようになります。

    ここまで見てきたように、脱毛症にはさまざまな種類があります。

    重要なのは原因によって対策が大きく異なるということです。

    生活習慣の見直しで改善が期待できるものもあれば、医療機関での治療が必要になるケースもあります。

    この中でも、特に多くの方に関係するのが「AGA(男性型脱毛症)」です。

    次の項目では、このAGAについて詳しく解説していきます。

    特にAGA(男性型脱毛症)は、他の脱毛症と異なり、何もしないと徐々に進行していくという特徴があります。

    これは、前述したDHTの影響によって、ヘアサイクルの乱れが継続的に起こるためです。

    その結果、髪は徐々に細く・短くなり、最終的には産毛のようになって目立たなくなっていきます。

    また、生活習慣の改善は頭皮環境のサポートにはなりますが、それだけで進行を止めることは難しいとされています。

    そのため、AGAは「気づいた時点で適切な対策をとること」が重要です。

    治療によって進行を抑えたり、改善が期待できるケースもあります。

    ④ 薄毛に男女差はある?原因と特徴の違い

    薄毛は男性だけでなく、女性にも悩んでいる方が少なくありません。

    そして、その原因や進行の仕方は性別によって異なります。

    ・男性 → AGA(男性型脱毛症)が最も多い  

    ・女性 → ホルモンバランスや生活習慣など複合的な要因  

    男性では、生え際や頭頂部から徐々に薄くなる「AGA」が多くみられます。

    一方、女性では、加齢による女性ホルモン低下等が原因の「びまん性脱毛」が多く、男性とは異なる経過をたどることが一般的です。

    そのため、「薄毛=すべて同じ対策でよい」というわけではなく、性別や原因に応じた適切な対応が重要になります。

    ⑤まとめ

    薄毛は一つの原因で起こるものではなく、さまざまな要因が関係しています。

    ・最も大きな原因は男性ホルモン(DHT)  

    ・遺伝によって影響の受けやすさが変わる  

    ・生活習慣も進行を後押しする要因になる  

    ・脱毛症にはいくつかの種類がある  

    ・特にAGAは進行性であり、早めの対策が重要  

    「なんとなく抜け毛が増えてきた」と感じている段階でも、その背景にはAGAが隠れている可能性があります。

    「まだ大丈夫」と思っているうちに進行してしまうのがAGAの特徴です。

    AGAは進行する脱毛症ですが、適切な治療によって進行を抑えることが可能です。

    次の記事では、AGA治療に使われる薬(フィナステリド・ミノキシジル)について、作用の仕組みからわかりやすく解説します。

    ※本記事は、日本皮膚科学会の診療ガイドラインなどを参考に作成しています。

  • 熱性けいれんで注意すべき薬とは?抗ヒスタミン薬・テオフィリンの危険性と正しい対応

    熱性けいれんで注意すべき薬とは?抗ヒスタミン薬・テオフィリンの危険性と正しい対応

    熱性けいれんやてんかんの既往がある方には、注意が必要な薬があります。

    代表的なものとして、第一世代抗ヒスタミン薬やテオフィリン製剤は、けいれんに関与する可能性があるため、使用に慎重な判断が求められます。

    そのため、過去に熱性けいれんやてんかんを起こしたことがある場合は、医療機関を受診する際に必ず伝えることが大切です。

    また、医療従事者側も既往歴の確認を徹底する必要があります。

    てんかんは意識消失やけいれんを繰り返す疾患ですが、この記事では特に「熱性けいれん」に焦点を当て、病態と薬の関係についてわかりやすく解説します。

    ① 熱性けいれんとは

    どんな病気か

    熱性けいれんは、38℃以上の発熱に伴って突然起こるけいれん発作です。

    発作時には、次のような様子がみられます。

    • 名前を呼んでも反応がなく、視線が合わない
    • 白目をむいたり、意識を失って倒れる
    • 手足をピーンと伸ばして全身が硬くなる
    • ガクガクと大きく手足を動かしたり、細かく震える

    また、症状が強い場合には、このような変化がみられることもあります。

    • 顔色が悪く青白い
    • 唇や口元が紫色になる(チアノーゼ)
    • 呼吸が弱くなる

    熱性けいれんが起こるメカニズム

    熱性けいれんは、生後6ヶ月〜5歳頃の子どもに多くみられ、38℃以上の発熱時に起こります。

    特に、発熱開始後24時間以内など、体温が急激に上昇するタイミングで起こりやすいとされています。

    この年代の子どもは脳の発達がまだ未熟で、外からの刺激に対して興奮しやすい状態にあります。

    そのため、急激な発熱という強い刺激にうまく対応できず、神経細胞が過剰に興奮(異常な電気信号の発生)を起こします。

    その結果、脳から全身の筋肉へ異常な信号が伝わり、けいれん発作として現れると考えられています。

    また、熱性けいれんには遺伝的要因の関与も指摘されており、親や兄弟に既往がある場合には、発症リスクが高くなることが知られています。

    熱性けいれんとてんかん

    熱性けいれんとてんかんは、どちらも脳の神経細胞が過剰に興奮し、異常な電気信号(放電)が発生することで発作が起こるという点では共通しています。

    しかし、その性質には大きな違いがあります。

    熱性けいれんは、発熱に伴って一時的に起こる発作であり、多くは成長とともに自然にみられなくなります。

    一方で、てんかんは発熱の有無に関わらず発作を繰り返す慢性的な疾患で、脳の異常や遺伝的要因などが関与する場合があります。

    また、熱性けいれんを経験した子どもが将来的にてんかんへ移行するケースはありますが、その頻度は高くありません。

    熱性けいれんの分類

    熱性けいれんは、大きく「単純型」と「複雑型」に分けられます。

    • 単純型

    5分以内でおさまる

    症状は全身性で左右対称

    けいれんするのは24時間のうち1回のみ

    多くは予後良好

    • 複雑型

    15分以上続く

    症状に左右差がある

    短時間でけいれんを繰り返す

    一部でてんかんへの移行リスクがやや高いとされる

    多くの熱性けいれんは単純型に分類され、成長とともに症状が出なくなり、後遺症の心配もありません。

    複雑型の場合は再発や神経学的リスクがやや高くなるため、より慎重な対応が必要です。

    そのため、既往がある場合は「どのタイプだったか」も含めて医療機関に伝えることが重要です。

    ② 熱性けいれんと薬の注意点

    発作時・予防の薬

    再発予防や発作時には、ダイアップ坐剤(ジアゼパム)が使用されることがあります。

    発熱時に使用するケースもありますが、使用するタイミングや適応は個々の状況(発作のタイプや頻度など)によって異なります。

    そのため、事前に医師の指示を確認し、適切に使用することが重要です。

    坐剤を使用する際の注意点

    けいれん予防でダイアップ坐剤を使用している場合、解熱剤のカロナール坐剤(アセトアミノフェン)との使い方に注意が必要です。

    一般的に、坐剤は基剤の性質の違いにより、短時間で続けて使用すると吸収に影響が出る可能性があります。

    そのため、まず水溶性のダイアップ坐剤を使用した後に、30分以上あけてから脂溶性のカロナール坐剤を使用することが推奨されます。

    注意が必要な薬

    以下の薬は、けいれんのリスクを高める可能性があるため注意が必要です。

    • 第一世代抗ヒスタミン薬

    ※代表的な第一世代抗ヒスタミン薬を以下にまとめています。

    また、これらの成分は総合感冒剤や一般用医薬品(市販薬)にも含まれていることがあります。

    知らずに使用してしまうケースもあるため、成分表示を確認することが重要です。

    • テオフィリン製剤

    テオドール、テオロング、ユニフィルなどがあります。

    なぜけいれんが起こりやすくなるのか

    これらの薬は中枢神経に作用し、脳の興奮性を高める方向に働くことがあります。

    • 第一世代抗ヒスタミン薬

    第一世代抗ヒスタミン薬が熱性けいれんの既往がある方に注意が必要とされる理由の一つに、中枢神経への作用があります。

    これらの薬は血液脳関門を通過しやすく、脳内に移行してヒスタミン受容体を遮断します。

    ヒスタミンは脳を覚醒させる働きがあるため、抗ヒスタミン薬では眠気(鎮静作用)が現れます。

    一見すると、「脳を落ち着かせる=けいれんを起こしにくくする」と思われがちですが、実際はそう単純ではありません。

    ヒスタミンは覚醒だけでなく、脳の過剰な興奮を抑える役割(抑制系)にも関与しています。

    いわば「脳のブレーキ」のような働きをしています。

    そのため、ヒスタミンを遮断すると眠気などの鎮静作用が現れる一方で、このブレーキが弱まり、神経細胞が興奮しやすくなる側面もあります。

    このように、見かけ上は脳を落ち着かせているように見えても、一部では興奮を抑える働きが低下するため、結果として神経細胞が興奮しやすい状態になると考えられています。

    • テオフィリン

    テオフィリンが熱性けいれんの既往がある方に注意が必要とされる理由の一つに、中枢神経への刺激作用があります。

    テオフィリンは、気管支を広げる作用に加えて、脳に対しても刺激的に働くことが知られています。

    その作用の一つに、カフェインの作用でも知られている「アデノシン受容体を阻害する働き」があります。

    アデノシンは、脳の神経活動を抑える「ブレーキ」のような働きをしており、神経の過剰な興奮を防ぎ、眠気を引き起こす物質としても知られています。

    しかし、テオフィリンはこのアデノシンの働きを抑えてしまうため、神経細胞が興奮しやすい状態になります。

    抗ヒスタミン薬とテオフィリンの共通点

    第一世代抗ヒスタミン薬とテオフィリンは、一見すると作用は異なりますが、どちらも脳の抑制機能(ブレーキ)に影響を与えるという共通点があります。

    • 抗ヒスタミン薬 → 抑制系を遮断する
    • テオフィリン → 抑制系(アデノシン)を弱める

    このように、異なる仕組みであっても、結果として神経細胞が興奮しやすい状態となり、けいれんを起こすハードル(けいれん閾値)が下がる可能性があると考えられています。

    そのため、熱性けいれんの既往がある場合は、これらの薬の使用には注意が必要です。

    特に発熱時はもともとけいれんが起こりやすい状態であるため、より慎重な対応が求められます。

    発熱時でなければ使ってよい?

    原則として、既往がある場合は慎重投与または回避が推奨されています。(熱性けいれん診療ガイドラインでも注意喚起されています)

    これらの薬は発熱の有無にかかわらず、脳の興奮性に影響を与える可能性があるためです。

    そのため、「熱がないから大丈夫」とは考えず、体質としてのリスクを踏まえて使用を検討することが重要です。

    ③ 熱性けいれんを起こしたときの対応

     まずやるべきこと 

    • あわてず、けいれんが始まってからの時間を確認する
      5分以上続くかどうかが重要な目安になります
    • 衣服をゆるめて楽な姿勢にする
    • 顔を横に向けて吐物による窒息を防ぐ
      体の右側を下にするとよいとされますが、どちらでも構いません

     やってはいけないNG行動

    • 口の中に物を入れる(指・タオル・割りばしなど)
      舌を噛むのを防ごうとして行われがちですが、窒息や嘔吐のリスクがあり危険です 
    •  体を強く押さえつける
    •  無理に意識を戻そうとする

    受診の目安

    以下の場合はすぐに医療機関を受診してください。

    また、不安が強い場合は、救急車を呼んでも問題ありません。

    • 5分以上けいれんが続く
    • 意識がなかなか戻らない
    • 左右差がある
    • 初めての発作
    • 1日に何度も繰り返す

    一方で、以下のような場合は緊急性が低く、当日〜翌日の受診でもよいとされています。

    • 5分未満で自然におさまった
    • 全身性で左右差がない
    • 発作後に意識が戻り、普段に近い様子に回復している
    • 繰り返していない

    ただし、判断に迷う場合や不安がある場合は、無理に様子を見るのではなく、医療機関へ相談することが大切です。

    ④ まとめ

    熱性けいれんは、乳幼児に比較的よくみられる発作で、多くは予後良好とされています。

    ただし、薬の中にはけいれんに影響するものもあるため注意が必要です。

    • 第一世代抗ヒスタミン薬やテオフィリンは慎重に使用
    • 既往歴は必ず医療機関に伝える
    • 発作時は落ち着いて対応する

    「なぜ起こるのか」「なぜその薬に注意が必要なのか」を理解することで、薬の選択や受診の判断に役立てることができます。

    不安な点があれば、自己判断せず医療機関や薬剤師に相談しましょう。

  • なぜカロナールは発熱や頭痛に効くのか?脳で作用する理由を薬剤師がわかりやすく解説

    薬剤師をはじめ、医療従事者の多くはカロナールについて、次のようなイメージを持っているのではないでしょうか。

    • NSAIDsより鎮痛効果が弱い
    • 副作用が少ない
    • 小児や妊婦にも使いやすい

    さらに一歩踏み込むと、炎症を伴う痛みに対してはNSAIDsの方が効果が高いとされる一方で、発熱や頭痛にはカロナールでも十分な効果を実感できるケースが多いと考えられます。

    実際、カロナールは安全性の高さから幅広く使用されている薬ですが、「なぜ頭痛や発熱には効きやすいのか?」を説明できる方は意外と多くありません。

    結論から言うとカロナールは、脳で作用しやすく炎症部位では作用が弱くなりやすい薬だからです。

    ここから、その理由を順を追って解説します。

    ①痛みや発熱はどのように起こるのか?

    まずは、痛みや発熱の仕組みを簡単に見ていきましょう。

    ケガで細胞が傷ついたときや、ウイルス・細菌に感染したとき、体の中では炎症反応が起こり、細胞膜から「アラキドン酸」という物質が放出されます。

    このアラキドン酸は、COX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素の働きによって、PG(プロスタグランジン)へと変換されます。

    このプロスタグランジンは、体内でさまざまな働きをしますが、特に次のような作用が重要です。

    • 痛みを感じやすくする(発痛作用)
    • 炎症に関与する
    • 脳の体温調節中枢に作用し、体温を上げる

    つまり、痛みや発熱の背景には「プロスタグランジンの増加」が関わっているのです。

    そのため、解熱鎮痛薬の多くは、このプロスタグランジンの産生を抑えることで効果を発揮します。

    ②カロナールが発熱・頭痛に効きやすい理由

    カロナールの基本的な作用

    カロナールはプロスタグランジンの産生を抑えることで、解熱・鎮痛作用を発揮します。

    適応は以下の通りです。

    • 各種疾患の鎮痛
    • 急性上気道炎などの解熱
    • 小児の解熱・鎮痛

    なぜカロナールは脳で効きやすいのか

    ここがこの記事の一番重要なポイントです。

    カロナールもNSAIDsも、COXを阻害してプロスタグランジンの産生を抑えるという点では共通していますが、決定的な違いがあります。

    実はカロナールの作用は、体内の環境に大きく影響されるという特徴があります。

    炎症が起きている部位(筋肉・関節など)には、免疫細胞の防衛反応により過酸化物質(過酸化脂質や活性酸素など)が発生します。

    カロナールのCOX阻害作用は、過酸化物質の影響を受けやすく、末梢では十分に発揮されにくいと考えられています。

    一方、炎症部位に比べて、脳(中枢神経系)は過酸化物質の影響を受けにくい環境とされています。

    その理由の一つとして、脳では抗酸化酵素などの働きにより、過酸化物質が比較的速やかに除去されることが挙げられます。

    そのため、カロナールによるプロスタグランジン産生抑制が働きやすく、解熱や頭痛に対する効果が発揮されやすいと考えられています。

    カロナールとNSAIDsの作用部位

    では、過酸化物質が存在する末梢で、なぜ筋肉痛や関節痛にNSAIDsは効きやすく、カロナールはそうでないのでしょうか。

    これは薬によってCOXに作用する部位が異なるためです。

    • カロナール  

     COXのペルオキシダーゼ部位に作用

     過酸化物質の影響を受けやすい

    • NSAIDs  

     COXのシクロオキシゲナーゼ部位を直接阻害

     環境の影響を受けにくい

    カロナールが作用するペルオキシダーゼ部位は、過酸化物質の存在下で反応が進みやすいという特徴があります。

    末梢の炎症部位では過酸化物質が多く存在するため、プロスタグランジンの産生が維持されやすく、結果としてカロナールの作用は相対的に弱まりやすいと考えられています。

    この違いにより、次のような使い分けが考えられます。

    • カロナール → 脳で効きやすい(解熱・頭痛)  
    • NSAIDs → 末梢でも効く(炎症・筋肉痛)

    ③カロナールとNSAIDsの使い分け

    ここまでの内容を踏まえると、次のように使い分けられます。

    カロナール

    • 解熱・頭痛に有効  
    • 中枢(脳)で作用しやすい
    • 胃腸障害などの副作用が比較的少ない

     ※ただし過量投与では肝機能障害に注意

    • 小児・妊婦にも使いやすい  

    NSAIDs

    • 炎症を伴う痛みに強い  
    • 筋肉痛・関節痛に有効
    • 末梢でもしっかり作用する
    • 胃腸や腎臓などの副作用に注意

    このように、作用部位の違いが使い分けのポイントとなります。

    ④まとめ

    カロナールは、NSAIDsと比べて「弱い薬」と思われがちですが、実際には作用する場所が異なるだけです。

    • 脳ではしっかり作用する  
    • 末梢の炎症部位では作用が弱くなりやすい  

    この特徴により、発熱や頭痛に対しては効果を発揮しやすく、副作用にも配慮しながら使用しやすい薬として広く用いられています。

    一方で、筋肉痛や関節痛など炎症が強い場合には、NSAIDsの方が適しているケースもあります。

    薬の特徴を正しく理解することで、

    症状に応じた適切な使い分けができるようになります。

    「なぜ効くのか」を理解しておくことは、薬に関係した仕事をする人にとってはとても重要なことです。

    また、用量を守ることは服用する方にとって非常に重要であり、特に長期使用や高用量では肝機能障害に注意が必要なことも忘れないように気をつけましょう。

  • マンジャロで本当に痩せる?美容目的で使う前に知りたい効果・副作用・費用を薬剤師が解説

    マンジャロで本当に痩せる?美容目的で使う前に知りたい効果・副作用・費用を薬剤師が解説

    「マンジャロって本当に痩せるの?」

    SNSや美容クリニックで話題になっているマンジャロ(一般名:チルゼパチド)

    確かに、体重減少が報告されている薬ではありますが、もともとは糖尿病の治療薬として開発されたものです。

    • なぜ痩せるのか
    • どれくらい痩せるのか
    • 副作用や費用は?

    こうした疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

    この記事では、薬剤師の立場から美容目的で使用する前に知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

    ① マンジャロとは?

    まず、マンジャロとはどのような薬なのかを下の表にまとめています。

    GLP-1受容体の刺激により、血糖値に応じたインスリン分泌が促進され、血糖値が低下します。

    また、胃の動きをゆっくりにすることで満腹感が持続し、食欲を抑える作用があります。

    さらにGIP受容体の刺激は、インスリン分泌を促進するだけでなく、GLP-1の作用を補強することで食欲調節やエネルギー代謝に関与し、結果として体重減少に寄与すると考えられています。

    マンジャロはもともと2型糖尿病治療薬として開発された薬です。

    既存の糖尿病治療薬はGLP-1受容体への作用のみでしたが、マンジャロの最大の特徴はGLP-1受容体だけでなくGIP受容体にも作用することで、より血糖低下作用やダイエット効果に期待できることです。

    これらのホルモンは、食事を摂取した際に腸から分泌されるホルモンで、次のような働きがあります。

    ・血糖値を安定させる

    ・満腹中枢に作用し満腹感を強める

    ・胃の動きをゆっくりにする

    こうした作用によって食事量が自然と減り、体重減少につながる可能性があるため、現在は美容クリニックなどでもダイエット目的で使用されることがあります。

    ② マンジャロはなぜ痩せるのか

    マンジャロで痩せる最大の理由は、食欲が自然に減ることです。

    その薬理作用を詳しく解説していきます。

    マンジャロが作用する2つのホルモン受容体

    マンジャロによって体重が減少する理由を理解するためには、まず「インクレチン」というホルモンについて知る必要があります。

    インクレチンとは、食事を摂取したときに小腸から分泌される消化管ホルモンの総称で、主に先ほども名前が出ているこちらの2種類があります。

    • GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)
    • GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)

    これらのホルモンの特徴は、血糖値に応じてインスリン分泌を調節する「血糖依存的作用」を持つことです。

    つまり、血糖値が高いときにはインスリン分泌を促進しますが、血糖値が低いときには過剰に作用しにくいため、糖尿病薬のリスクである低血糖を起こしにくいという特徴があります。

    また、GLP-1とGIPは分泌される場所が異なることも重要なポイントです。

    • GIPは小腸上部(十二指腸・空腸)のK細胞から分泌される
    • GLP-1は小腸下部(回腸)のL細胞から分泌される

    なお、GIPは以前、脂肪の蓄積を促す「肥満ホルモン」として考えられていた時期もありました。

    しかし、近年の研究により、GLP-1とともに体重減少に関わる作用を持つことが分かってきています。

    マンジャロは、このGLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用する薬剤です。

    このような薬剤はデュアルインクレチン受容体作動薬とも呼ばれています。

    GLP-1受容体作動薬は以前から糖尿病治療薬として使用されてきましたが、マンジャロはGIP受容体にも同時に作用する点が大きな特徴です。

    GLP-1とGIPの主な作用を、次の表にまとめました。

    表で示したように、GLP-1とGIPはそれぞれ異なる作用を持っていますが、マンジャロではこれらの作用が同時に働くことが重要なポイントです。

    マンジャロの作用を一言でまとめると、次の3つです。

    • 食欲が抑えられる
    • 満腹感が持続しやすくなる
    • 食後血糖の急激な上昇が抑えられる

    血糖値が急激に上昇すると、その後インスリン分泌によって血糖値が急激に低下し、強い空腹感を感じることがあります。

    いわゆる血糖値スパイクと呼ばれる状態です。

    マンジャロは食後血糖の上昇を穏やかにすることで、このような血糖値の大きな変動を抑え、空腹感が起こりにくい状態をつくります。

    さらに満腹感が持続しやすくなるため、自然と食事量が減少し、結果として体重減少につながると考えられています。

    実際どれくらい痩せるのか

    実際の体重減少については、製造販売元であるイーライ・リリーが実施した「SURMOUNT-1試験」で検証されています。

    72週間の投与において、体重は平均で約15〜21%減少し、治療を継続できた患者では最大約22.5%の減少が報告されています。

    用量別では、5mgで約15%、10mgで約19.5%、15mgで約20.9%と、用量依存的に減量効果が高まる傾向が確認されています。

    ただし、これらは臨床試験の結果であり、実際の効果には個人差がある点には注意が必要です。

    出典:イーライ・リリー社資料
    https://mediaroom.lilly.com/PDFFiles/2024/24-27_com.jp.pdf


    ③ 美容目的で使う場合の費用

    マンジャロを美容目的で使用する場合は、保険適用外(自由診療)となります。

    費用の目安としては、月あたり約2万〜10万円程度です。

    費用はクリニックごとに異なり、薬剤料・診察料・管理料などが含まれます。

    このように価格に幅がある理由は、使用する用量によって費用が大きく変わるためです。一般的に、高用量になるほど使用量が増えるため、費用負担も大きくなる傾向があります。

    目安としての費用は以下の通りです。

    • 低用量(2.5〜5mg):月2万〜4万円前後 
    • 中用量(7.5〜10mg):月4万〜7万円前後 
    • 高用量(12.5〜15mg):月7万〜10万円前後  

    処方を受けられる場所としては、これらの病院があります。

    • 美容クリニック 
    • オンライン診療 
    • 内科や肥満外来などの一部医療機関  

    なお、すべての医療機関で美容目的の処方を行っているわけではないため、事前に確認が必要です。

    ④ 副作用とリスク

    よくある副作用

    比較的よくみられるのは、以下のような消化器症状です。

    これは、胃の動きがゆっくりになる作用などによって起こると考えられています。

    • 吐き気
    • 下痢
    • 便秘
    • 胃の不快感

    これらの副作用は、多くの場合、体が慣れることで徐々に軽くなることがあります。

    ただし、症状が強い場合や長く続く場合は、医師へ相談することが大切です。

    重大な副作用

    頻度は高くありませんが、以下のような重大な副作用が報告されています。

    • 急性膵炎

    強い腹痛や背中の痛み、吐き気などがみられることがあります。

    • 低血糖

    冷や汗や動悸、めまい、ふらつきなどの症状があらわれることがあります。

    • アナフィラキシー

    じんましん、息苦しさ、顔や喉の腫れなどの症状が急にあらわれることがあります。

    • 腸閉塞(イレウス)

    強い腹痛、腹部の張り、吐き気や嘔吐などがみられることがあります。

    そのほか、胆嚢炎や胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸などが報告されていますが、頻度は高くありません。

    吐き気がひどく水分や食事がとれない場合、激しい下痢が続き脱水症状がある場合、強い腹痛が続く場合、または注射部位の腫れや赤みが強い場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。

    ⑤ 使用する際の注意点(生活習慣・注射方法)

    マンジャロは正しく使用すれば効果が期待できる一方で、使い方によっては副作用が出やすくなることもあります。

    安全に使用するために、以下のポイントを押さえておきましょう。

    食事で気をつけること

    消化器症状を悪化させないために、以下のような食事には注意が必要です。

    • 脂っこい食事
    • 甘いジュースやスイーツ
    • 暴飲暴食

    マンジャロの作用により胃の動きがゆっくりになるため、食べ過ぎは症状を悪化させる可能性があります。

    これらは胃腸への負担を増やし、吐き気や下痢などの症状を悪化させることがあります。

    避けるべき行動

    次のような行動は、副作用(特に低血糖など)のリスクを高める可能性があります。

    • 過度な食事制限
    • 多量の飲酒
    • 食事を全く摂らない

    特に、急激な体重減少や極端な食事制限が続くと、胆石のリスクが高まる可能性も指摘されています。

    注射の注意点

    マンジャロは皮下注射で使用します。

    注射部位は以下の通りです。  

    • 腹部
    • 太もも
    • 二の腕

    同じ場所に繰り返し注射すると皮膚トラブルの原因になるため、毎回部位を変えることが大切です。

    また、使用方法に不安がある場合は、自己判断せず医師や医療機関に相談することが重要です。

    ⑥ まとめ

    マンジャロは、もともと糖尿病の治療薬として開発された薬であり、食欲を抑えたり胃の動きをゆっくりにしたりすることで、結果として体重が減ると考えられています。

    ただし、副作用のリスクや費用負担、体質による個人差などもあるため、使用には注意が必要です。

    また、使用を中止すると食欲が戻り、体重が戻る可能性もあります。

    ダイエットを成功させるためには、食事や生活習慣の改善をあわせて行うことが重要です。

    マンジャロは医師の判断のもとで使用される医薬品です。

    無理なダイエット目的で安易に使用するのではなく、まずは医療機関で相談し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

  • 防風通聖散はなぜダイエットに使われる?薬剤師が仕組みを解説

    防風通聖散はなぜダイエットに使われる?薬剤師が仕組みを解説

    便秘気味で、お腹まわりの脂肪が気になる。

    「防風通聖散って本当に痩せるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

    市販でも購入できるため、なんとなく試している人や、買ってみようかなと思っている人もいると思います。

    ですが、「なぜ痩せるのか」を理解している人は多くありません。

    実は防風通聖散は体質に合えば効果が期待できますが、そうでなければ「思ったほど痩せない」と感じる事もありえます。

    この記事では、防風通聖散がお腹の脂肪にどう関わるのかを薬剤師の視点で整理します。

    ① 防風通聖散とは?

    防風通聖散は「脂肪を直接減らす薬」ではなく、体にたまった余分な熱や水分の停滞を改善し、体のバランスを整える漢方薬です。

    その結果として、代謝や便通が改善し、体重が変化することがあります。

    つまり「痩せ薬」というより、痩せやすい状態を作る薬と考えると理解しやすいでしょう。

    さらに防風通聖散の構成生薬も表にしていますのでご参照ください。


    ② 防風通聖散でなぜ痩せるのか

    防風通聖散で体重が減る理由は、1つではありません。

    いくつかの作用が重なった結果として体重変化が起こります。

    薬剤師の視点から、重要なポイントを順番に解説します。

    【1】便通改善作用(最初に体重変化を感じやすい理由)

    防風通聖散には 大黄(ダイオウ) や 芒硝(ボウショウ) が含まれています。

    これらは腸の動きを促し、便をやわらかくする作用を持つ生薬です。

    • 腸内に滞っていた内容物が排出される
    • お腹の張りが改善する

    こうした作用により、服用初期に体重が減ることがあります。

    ここで重要なのは、これは脂肪が減ったわけではないという点です。

    ただし、慢性的な便秘が改善すると腸内環境や代謝にも良い影響が出るため、その後の体質改善につながることに期待できます。

    【2】麻黄による代謝・発汗促進作用

    防風通聖散には 麻黄(マオウ) が含まれています。

    麻黄に含まれる成分は交感神経を刺激し、下記の作用が期待されます。

    • エネルギー消費の増加
    • 食欲抑制
    • 脂肪分解酵素(ホルモン感受性リパーゼ)活性化

    ただし、強力な「脂肪燃焼サプリ」のような作用というよりも、基礎代謝を少し底上げするイメージの方が適切と言えます。

    そのため、生活習慣改善と組み合わせたときに体重変化が出やすくなります。

    【3】内臓脂肪蓄積への影響

    防風通聖散は、特にお腹周りの脂肪に効くという訳ではありません。

    お腹の脂肪を狙って燃焼させるような薬は現在では開発されていません。

    ただ、内臓脂肪は他の部位に比べて反応しやすいので、ポッコリお腹に効果が出やすいとされています。

    研究では、防風通聖散が内臓脂肪の蓄積に関わる代謝へ影響する可能性も報告されています。

    特に、脂質代謝の改善や炎症性サイトカインの抑制といった作用が示唆されています。

    ただしここでも重要なのは、 脂肪を直接溶かす薬ではないという点です。

    防風通聖散は「脂肪を減らす薬」ではなく、脂肪がたまりやすい体質を整える薬というとらえ方が適切です。

    ③ 向く人・向かない人と注意点

    どんな人に向いている薬なのか

    防風通聖散は、誰にでも合う漢方薬ではありません。

    実証の人に向いていると解説しましたが、具体的に示していきます。

    特に効果が期待しやすいのは次のようなタイプの方です。

    • お腹まわりに脂肪がつきやすい
    • がっしり体型(実証)
    • 便秘傾向
    • 食欲旺盛
    • のぼせやすく暑がり

    一方で、次のような方では副作用が出やすく注意が必要です。

    • 痩せ型・体力が低い
    • 胃腸が弱い
    • 冷え性
    • 下痢しやすい

    重篤な副作用や長期服用に注意

    稀ではありますが、間質性肺炎や肝機能障害などの重篤な副作用も報告されています。

    検査値の異常等がないかを、医療機関で定期的に確認してもらうこともお勧めします。

    また、長期服用することで、山梔子(サンシシ)が原因の大腸静脈石灰化による腸間膜静脈硬化症や、大黄(ダイオウ)による大腸粘膜が褐色〜黒色に変色する大腸メラノーシスの可能性もあるので、必要に応じて休薬期間を設ける事も大事です。

    ④ まとめ

    防風通聖散は「飲むだけで痩せる薬」ではありません。

    便通改善、代謝促進、体質調整といった作用によって、結果として体重が減ることがある漢方薬です。

    合う人には効果が期待できますが、体質に合わなければ十分な効果は得られません。

    なんとなく「ダイエット薬」として飲むのではなく、自分の体質に合っているかを理解したうえで選ぶことが大切です。

  • 【薬剤師が解説】ビタミンCの本当の効果|美容・免疫・疲労回復まで仕組みからわかる完全ガイド

    「ビタミンC=美白や美容のための栄養素」

    そんなイメージを持っている方は多いかもしれません。

    しかし実際のビタミンCは、肌だけでなく、血管、免疫、ホルモン、代謝など、体のあらゆる機能を支える“基礎インフラ”のような存在です。

    不足すると、肌トラブルだけでなく、疲れやすさや回復力の低下といった不調にも関わることが知られています。

    また医療現場では、皮膚疾患や貧血治療、回復期の栄養補助など、さまざまな場面で処方薬としても使用されています。

    この記事では、薬剤師の視点から、

    「なぜビタミンCが体に必要なのか」を仕組みからわかりやすく解説します。

    • ビタミンCの本当の働き
    • 美容・健康への科学的な影響
    • 効率のよい摂取方法
    • 医療現場での使われ方

    読み終えるころには、ビタミンCが「特別な栄養素」ではなく、毎日の体調を支える“土台”である理由が理解できるはずです。

    まずは、ビタミンCの基本的な性質と生理作用を理解することで、その美容効果や健康への影響がどのように生まれるのかを整理していきます。

    ビタミンCとは

    ① ビタミンCの特徴と生理作用

    ビタミンC(アスコルビン酸)は人間にとって重要な栄養素でありながら、体内で合成することができません。

    そのため、食事やサプリメントからの摂取が必須です。

    ビタミンC(アスコルビン酸)は小腸で吸収され、特にストレスや代謝の活発な副腎、脳、肝臓、眼の水晶体、白血球に高濃度で分布・貯蔵されます。

    構造と特徴

    構造式を見るとわかりますが、ビタミンCは非常に酸化されやすい構造をしています。

    特に、五員環に付いている水酸基(–OH)に注目すると、この水酸基が酸化されやすく、H(水素)が外れやすいのです。この性質こそが、後述する「抗酸化作用」の正体となります。

    ビタミンCの主な生理作用

    ビタミンCの働きは多岐にわたりますが、特に重要なのは以下の点です。

    【1】コラーゲン合成に必須  

    コラーゲンは、体内で皮膚・血管・骨・軟骨の強度を保つ重要なタンパク質です。  

    食事から摂取したコラーゲンは、いったん体内でアミノ酸に分解され、その後あらためてコラーゲンとして合成されます。  

    そのため、摂取したコラーゲンがそのまま体内で利用されるわけではありません。

    コラーゲンは、3本のペプチド鎖が複雑に絡み合った「三重らせん構造」をしており、この構造を作る過程でビタミンCが酵素反応を助ける重要な役割を果たします。

    つまり、ビタミンCが十分にあることでコラーゲン合成はスムーズに進みますが、ビタミンCが不足すると、コラーゲンの合成が滞ってしまいます。

    【2】抗酸化作用

    体内で活性酸素が過剰に生成されると、その酸化作用により老化(シミ・シワ)や動脈硬化、がん、糖尿病などのリスクを高めることが知られています。

    ビタミンCは、不安定で酸化力の強い活性酸素に電子を1つ提供し、還元して安定化させる働きを持ちます。

    これにより紫外線などによる酸化ダメージを軽減し、シミやシワの予防に寄与すると考えられています。

    また、血中のLDLコレステロールの酸化を抑制し、血管内皮へのダメージを軽減することで、動脈硬化の予防にも関与します。

    さらに、コレステロールから胆汁酸が合成される過程にもビタミンCが関与するとされ、脂質代謝の維持にも関わっています。

    加えて、ビタミンEなど他の抗酸化物質が酸化された際には、それらを還元して再活性化させる働きもあり、体内の抗酸化ネットワークを支える重要な役割を担っています。

    【3】免疫機能の向上

    白血球(好中球やリンパ球)の内部には、ビタミンCが血中よりも高濃度で存在しています。

    ビタミンCは、白血球の遊走能や貪食能をサポートし、病原体に対する防御機能の維持に関与し、免疫反応の過程で発生する活性酸素から白血球自身を保護する抗酸化作用も担っています。

    感染症や強いストレス状態では体内のビタミンCが消費されやすくなることが知られており、不足しないよう日常的に摂取することが重要です。

    なお、ビタミンCの補給により風邪の発症を完全に防げるわけではありませんが、一般集団では予防効果は限定的ですが、強い運動負荷や寒冷環境下では発症率低下が報告されています。

    【4】鉄の吸収促進

    ビタミンCは、吸収されにくい非ヘム鉄(Fe³⁺)を、吸収されやすい二価鉄(Fe²⁺)へと還元する働きを持っています。

    野菜や穀物、豆類に含まれる非ヘム鉄はそのままでは吸収率が低いですが、ビタミンCと一緒に摂取することで吸収率が高まります。

    そのため、鉄欠乏性貧血の治療においては、鉄剤とビタミンCを併用することがあります。

    【5】ホルモン合成の補助

    ビタミンCは、体内でホルモンや神経伝達物質を作る際に必要な補助因子として働きます。

    ストレスを感じると、副腎から分泌されるコルチゾールなどのストレス対抗ホルモンの生成にビタミンCが使われるため、体内での消費量が増えると考えられています。

    また、脳や神経ではドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の合成にも関与しており、気分や集中力の維持にも関係します。

    さらに、セロトニンや睡眠ホルモンであるメラトニンの生成にも関わることから、ストレス応答や睡眠リズムを支える栄養素の一つとされています。

    ビタミンCが不足すると、これらのホルモンや神経伝達物質の働きが十分に保たれず、疲れやすい、ストレスに弱くなる、気分の落ち込み、集中力低下、睡眠の質の低下などの不調が起こりやすくなる可能性があります。

    【6】生体異物の代謝・解毒をサポート

    ビタミンCは、体内に入った薬物や汚染物質、重金属などの「生体異物(ゼノバイオティクス)」を、体外へ排出しやすくする解毒過程を支える働きがあると考えられています。

    これらの異物は主に肝臓で代謝されますが、その中心となる酵素が、シトクロームP450(肝臓で薬や有害物質を分解する酵素)です。ビタミンCは、この酵素系の働きを維持し、異物の代謝がスムーズに行われる環境を支える役割を担っています。

    また、消化管内で発生する可能性のあるニトロソアミンなどの発がん性物質の生成を抑える働きも報告されています。

    そのためビタミンCは、体内に不要な物質を溜め込みにくくし、日常的な解毒機能を支える栄養素の一つと考えられています。

    ② ビタミンCの美容効果

    メラニン生成の抑制

    ビタミンCは、メラニン生成に関与する酵素「チロシナーゼ」の活性を抑制します。

    これにより、以下の効果が期待できます。

    • シミ・そばかすの予防
    • 肌の明るさを保つ(美白効果)

    チロシナーゼは、メラノサイト(色素細胞)内でメラニン生成を促進する酵素です。

    メラニンは本来、紫外線などの刺激から肌を守る重要な防御機構ですが、紫外線刺激やターンオーバーの乱れによって過剰に生成・蓄積すると、シミや黒ずみ、色素沈着の原因となります。

    多くの美白成分は、このチロシナーゼの働きを抑えることで、メラニンの過剰生成を防ぎ、肌を明るく保つ作用を示します。

    ただし、ビタミンCは既にできたシミを完全に消すものではなく、主に新たなメラニン生成を抑える働きが中心です。そのため、継続的なケアとして取り入れることが重要とされています。

    コラーゲン生成が促進されるとどうなる?

    体内でコラーゲンが十分に維持されると、組織の構造が安定し、皮膚や血管などの機能が健やかに保たれます。

    コラーゲンは特に皮膚の真皮層に多く存在し、網目状の構造を作ることで肌の土台を支えています。この構造が保たれることで、

    • 肌のハリ・弾力の維持
    • 小じわの予防
    • 水分を保持しやすい状態の維持
    • 傷の治りやすさの維持

    などにつながります。

    また、コラーゲンは血管や関節、骨にも存在しており、体全体のしなやかさや強度の維持にも関与しています。

    加齢や紫外線、酸化ストレスによってコラーゲンは徐々に減少・劣化するため、体内で正常なコラーゲン代謝が保たれることが、肌や身体機能の維持に重要と考えられています。

    皮脂抑制・ニキビ予防

    ビタミンCには皮脂分泌を穏やかに調整する作用があり、ニキビ予防にも関与します。

    ビタミンCは抗酸化作用により皮脂の酸化を防ぎ、炎症を起こしにくい状態を保ち、皮脂量を適度に抑えることでアクネ菌の増殖を抑制し、ニキビができにくい肌環境づくりに寄与します。

    さらに、コラーゲン合成をサポートすることで毛穴周囲の皮膚構造を整え、毛穴の目立ちにくさにも関与すると考えられています。

    その結果、以下のような効果が期待されます。

    • ニキビの予防
    • 毛穴の目立ちにくさ
    • 肌荒れの改善サポート

    ただし、重症ニキビでは外用薬や内服治療が必要となるため、症状が続く場合は皮膚科受診が推奨されます。

    ターンオーバーの正常化

    ターンオーバーとは、皮膚の細胞が生まれてから角質となり、自然に剥がれ落ちるまでの「肌の生まれ変わり」のサイクルです。

    健康な成人では約28日周期ですが、加齢や紫外線、睡眠不足、栄養不足などにより年齢とともに遅くなる傾向があります。

    ビタミンCは抗酸化作用によって肌細胞を酸化ストレスから守り、正常な細胞分裂と再生環境をサポートし、ターンオーバーの乱れを整える働きが期待されます。

    ターンオーバーが整うと古いメラニンが排出されやすくなり、くすみ改善や肌のキメ向上につながります。一方、乱れると角質が蓄積し、シミ・くすみ・ニキビなどの肌トラブルが起こりやすくなります。

    ③ 欠乏症・過剰症

    欠乏症

    ビタミンCが著しく不足すると、「壊血病(かいけつびょう)」と呼ばれる欠乏症を引き起こします。壊血病ではコラーゲン合成が低下するため、歯肉出血や皮下出血、創傷治癒遅延などがみられます。

    一方、現代では典型的な壊血病はまれですが、診断名がつかない程度のビタミンC不足でも、以下の症状が現れることがあります。

    • 傷が治りにくい
    • 疲労感・だるさ
    • 免疫機能の低下(風邪をひきやすい)

    過剰症

    ビタミンCは水溶性ビタミンのため、余分な量は尿中に排泄され、通常の食事で過剰になる心配はほとんどありません。

    ただし、サプリメントなどで1日2,000mg以上を摂取すると、下痢・腹痛・吐き気などの消化器症状が起こることがあります。

    また、尿路結石のリスクが高まる可能性もあり、特に腎機能障害のある方は注意が必要です。

    ④ ビタミンCの摂取量と摂取方法

    食事摂取基準

    以下のビタミンC 食事摂取基準の表を参考にされてください。

    推奨量を日常的な摂取目標の目安とすることが望ましいです。


    令和元年の国民健康・栄養調査より日本人のビタミンC摂取量は平均93.5㎎とされており、推奨量をやや下回る数字です。

    しかし、飲酒の習慣のある人や喫煙者、感染症にかかっている方等はビタミンCが消費されてしまうので、より多くの摂取の必要がある場合があります。

    また、偏食や野菜不足の方はビタミンCが不足している可能性が十分にあります。

    さらには妊婦・授乳婦、ストレスを感じている人、美容・健康を意識する方は積極的な摂取を意識するとよいでしょう。

    効率的なビタミンCの摂り方(吸収率を高める食べ方・飲み方)

    ビタミンCは体内で重要な働きをしますが、性質上失われやすい栄養素でもあります。主な特徴は次のとおりです。
    これらの性質を理解すると、ビタミンCを無駄なく摂取するポイントが分かります。

    • 水溶性ビタミン:水に溶けやすく、洗浄や調理中に流出しやすい
    • 熱や空気に弱い:長時間の加熱や酸素への曝露で分解されやすい
    • 体内に蓄積されにくい:余剰分は尿中へ排泄されてしまう


    そのため、以下のような工夫をすると効率よく摂取できます。

    • 野菜や果物は生食、または短時間加熱を意識する
    • 水にさらしすぎない(切った後の長時間の流水は避ける)
    • スープや味噌汁など、溶け出した栄養ごと摂れる調理法を活用する
    • 一度に大量摂取せず、1日数回に分けて摂取する

    ビタミンCは小腸で能動輸送によって吸収されますが、一度に大量に摂取すると吸収率が低下します。

    さらに水溶性なので体内に蓄積されないため、数回に分けて摂取する方が効率よく体内に取り込まれます。

    また、ビタミンCサプリメントは弱酸性のため、空腹時に摂取すると胃部不快感を生じることがあります。

    吸収効率と胃への負担の両面から、食後の分割摂取が推奨されます。

    ビタミンCが多い食品

    ビタミンCが多く含まれる野菜と果物を記載しています。
    可食部100gあたりの含有量を示していますが、調理法や食材の部位、季節などによって多少前後します。

    【1】ビタミンCが多い野菜

    • 赤ピーマン (170㎎)
    • 黄ピーマン (150㎎)
    • ブロッコリー (140㎎)
    • パセリ (120㎎)
    • 菜の花 (110㎎)
    • ケール (81㎎)
    • ゴーヤ (76mg)
    • ピーマン (76㎎)
    • キャベツ (41㎎)
    • 小松菜 (39㎎)
    • ほうれん草 (35㎎)
    • えだまめ (27㎎)

    【2】ビタミンCが多い果物

    • アセロラ (800~1700㎎)
    • 黄色キウイ (140㎎)
    • レモン (100㎎)
    • 緑キウイ (71㎎)
    • 柿 (70㎎)
    • あけび (65㎎)
    • いちご (62㎎)
    • オレンジ (60㎎)
    • かぼす果汁 (42㎎)
    • ゆず果汁 (40㎎)
    • なつみかん (38㎎)
    • グレープフルーツ (36㎎)
    • ライチ (36㎎)
    • みかん (32㎎)

    このようにビタミンCは野菜や果物に豊富に含まれており、バランスの良い食事を心がければ、十分な量を摂取することが可能です。

    果物や野菜以外にも、実はイモ類にもビタミンCがあり、じゃがいもやサツマイモにも100gあたり約30㎎前後のビタミンCが含まれています。

    野菜や果物との違いは、イモ類に含まれるビタミンCはデンプンに守られているため、加熱しても失われにくいという特徴があります。

    フライドポテトや焼きイモにしても、調理条件によりますが、比較的多くのビタミンCが保持されることが知られています。

    日常的には、特定の食品に偏るよりも、野菜、果物、イモ類を組み合わせて摂取することが、安定したビタミンC補給につながります。

    ⑤ビタミンCの処方薬と使われ方

    主な処方薬と特徴

    【1】アスコルビン酸(ビタミンC製剤)

    最も基本的なビタミンC製剤。ビタミンC補充や抗酸化作用を目的として幅広く使用される。

    【2】ハイシー

    アスコルビン酸を主成分とする製剤で、ビタミンC補給や皮膚疾患や代謝障害の補助療法などに用いられる。

    【3】シナール配合錠

    アスコルビン酸に加えて、パントテン酸カルシウム(ビタミンB5)を含有。

    皮膚代謝のサポート目的で、にきび・色素沈着・肝斑などに処方されることが多い。

    【4】アスコルビン酸注射・点滴製剤

    経口摂取が困難な場合や、術後・重症患者・栄養管理目的などで使用される。
    美容目的等で使用されることもある。

    どんな疾患で処方される?

    【1】ビタミンC欠乏症(壊血病)

    現在ではビタミンCの顕著な欠乏は稀ですが、以下の状況で発症リスクがあります。

    • 栄養不足・偏食
    • 妊娠・授乳期
    • 高熱や炎症性疾患
    • 甲状腺機能亢進症
    • 長期の下痢
    • 手術後・外傷・熱傷(やけど)など

    ビタミンC欠乏により歯肉出血、皮下出血、創傷治癒遅延などの症状が出る場合があります。

    【2】皮膚疾患(補助療法)

    • にきび
    • 湿疹・皮膚炎
    • 炎症後色素沈着
    • 肝斑

    ビタミンCの抗酸化作用やメラニン生成抑制作用を目的として処方されます。

    ※単独で治す薬ではなく、外用薬や他の内服薬と併用されることが一般的です。

    【3】鉄欠乏性貧血の補助療法

    ビタミンCは鉄を吸収されやすい形(Fe³⁺→Fe²⁺)へ変換するため、鉄剤と併用されることがあります。

    なお、日本で使用されている多くの経口鉄剤はすでに二価鉄製剤ですが、ビタミンCは鉄の溶解性を高めることで吸収をサポートすると考えられています。

    実際の臨床では、このような併用例があります。

    ・フェロミア(クエン酸第一鉄ナトリウム)

    ・ビタミンC製剤

    このような処方は鉄吸収効率の向上を目的としています。

    【4】その他(代謝・回復補助)

    ビタミンCは体内のさまざまな代謝反応やストレス応答に関与しており、全身状態の回復をサポートする目的で処方されることがあります。

    • 薬物中毒時の補助療法

    ビタミンCの抗酸化作用により、薬物や毒性物質によって生じる酸化ストレスの軽減を目的として使用されることがあります。

    • 副腎機能低下時の補助

    ビタミンCは副腎に高濃度に存在し、ストレス時には消費量が増加すると考えられています。そのため、副腎機能低下や強いストレス状態では補助的に用いられる場合があります。

    • 術後、感染症、消耗状態

    手術後や感染症、発熱などでは体内の酸化ストレスや栄養消費が増加します。回復期の栄養補助としてビタミンCが処方されることがあります。

    ハイシーなどのビタミンC製剤は、このような全身状態の回復を目的として使用されることがあります。

    なお、同じビタミンC製剤でもシナールとハイシーでは適応や使用目的が一部異なります。

    皮膚代謝に関与するパンテトン酸を配合したシナールは主に皮膚症状の改善目的で用いられることが多く、比較的高用量のビタミンC補給を目的としてハイシーは、代謝補助や全身状態の改善を目的として使用されることが多いという特徴があります

    補足:ビタミンCは「補助療法」で使われることが多い

    ビタミンCは主要な治療薬というより、体の回復や代謝をサポートする補助薬として処方されるケースが多いのが特徴です。

    特に皮膚治療では即効性は乏しく、効果判定には時間が必要です。

    皮膚のターンオーバー周期(約28日前後)を目安に、一定期間継続して服用することが勧められる場合があります。

    また、美容目的のみの場合は保険適用外となり、自費診療となることもあります。

    ⑥ まとめ

    ビタミンCは「美白のための特別な栄養素」というよりも、体のさまざまな機能を支える“土台”となる存在です。

    肌、血管、骨、免疫、代謝・・・

    これらすべてに関わるからこそ、 不足しないことが何より重要です。

    まずは、普段の食事、偏食や生活習慣を見直し、 毎日安定して摂れているかを意識してみてください。

  • ビタミンB1の働きとは?不足するとどうなる?症状・効果を薬剤師がやさしく解説

    ビタミンB1の働きとは?不足するとどうなる?症状・効果を薬剤師がやさしく解説

    今回は、ビタミンB1の働きや不足すると起こる症状、臨床での使われ方についてまとめました。この記事で分かることを最初にお伝えします。

    ・ビタミンB1の働きと不足時の症状

    ・肩こりや疲労との関係

    ・脚気の歴史と現代医療での使われ方

    ・食事や薬での補い方

    ①ビタミンB1の特徴と生理作用

    ビタミンB1(別名:チアミン)は、水に溶ける「水溶性ビタミン」の一種で、食事から摂取した糖質から体のエネルギーを作り出す代謝に欠かせない栄養素です。

    ビタミンB1と糖質代謝の関係

    私たちは米やパン、麺類などを食べることで糖質を得ています。

    しかし、ビタミンB1がなければ糖質は効率よくエネルギーに変換できません。

    体内に入ったビタミンB1は、「チアミン二リン酸(TPP)」という形に変換され、糖質をエネルギーに変える代謝で補酵素として重要な役割を果たします。

    こうして作られたエネルギーは、体を動かすだけでなく、脳の働きにも使われます。

    そのため、ビタミンB1が不足すると糖質代謝がうまく進まず、疲れやすくなったり、集中力が低下したりする原因になります。

    ビタミンB1の神経への影響

    神経細胞の主要なエネルギー源も、糖質が分解されてできるブドウ糖であり、ビタミンB1はそのブドウ糖をエネルギーに変える反応にかかわっています。そのためビタミンB1は、神経の働きを支えるという重要な役割も担っているといえるでしょう。

    実際にビタミンB1が不足すると、神経の機能がうまく働かなくなって神経痛、しびれ等が現れることがあります。

    ビタミンB1不足による肩こり

    ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換し、筋肉や神経の働きを支えていますが、不足すると筋肉でのエネルギー産生が低下するので、肩の筋肉は疲労しやすく、こわばりやすくなります。

    筋肉は使いすぎたり、血流が低下すると、乳酸などの疲労関連物質がたまって硬くなります。つまり肩の筋肉に過剰な負担がかかると肩こりを起こしやすくなります。

    ビタミンB1は、肩にたまった疲労物質である乳酸の蓄積を抑え、疲労回復を助ける働きがあります。

    また、ビタミンB1は神経機能の維持にも関与しており、不足すると神経の働きが低下し、肩こりに伴う痛みやしびれを感じやすくなることがあります。

    動悸や浮腫に関して

    ビタミンB1が足りなくなると、心臓がエネルギー不足を起こしポンプ機能が低下します。

    それが原因となって、動悸や浮腫等の症状が出ることがあります。

    ビタミンB1の肌への効果

    ビタミンB1は皮膚や粘膜の健康維持や、疲労・糖質過多に伴う肌荒れのケアに役立つと考えられています。

    しかし、ビタミンB1には直接的に肌をきれいにする作用があるわけではなく、美容目的でビタミンB1単独を服用することは一般的ではありません。

    実際に、ビタミンB1の処方医薬品には肌荒れやニキビに対する適応は設定されていません。

    ビタミンB1とアルコール代謝の関係

    アルコールは体内で、エタノール→アセトアルデヒド→酢酸と分解されていきます。

    この分解反応そのものに、ビタミンB1は直接関与しませんが、最後に代謝された酢酸がエネルギーとして利用される過程で、糖質代謝と同様にビタミンB1が重要な役割を果たします。

    そのため、飲酒量が多い人や慢性的にアルコールを摂取している人では、ビタミンB1が消費されやすく、不足しやすい状態になると考えられています。

    ②ビタミンB1摂取について

    ビタミンB1の必要摂取量

    ビタミンB1の1日推奨量は、成人男性でおよそ1.0~1.2mg。成人女性は0.7~0.9mgですが、10代女性や妊娠中の方では0.9~1.2mg程度の摂取を目標にすることが望ましいとされています。

    詳しい数値や年代別の基準については、下記リンクをご参照ください。

    出典:日本人の食事摂取基準(2025年版) ビタミン(水溶性ビタミン)

    日本人のビタミンB1摂取状況

    令和元年の国民健康・栄養調査によると、日本人(成人)のビタミンB1の1日平均摂取量は約0.95mgとされています。

    あくまでも平均値だけを見れば、欠乏症をおこすような摂取量ではなくとも、不足気味だという人は少なくなさそうです。

    また、糖質を多く食べる人、運動量が多い人、アルコールをよく飲む人は必要量が増加するため、不足に注意が必要です。

    ビタミンB1を多く含む食品

    代表的なものをあげると、以下のとおりです。

    • 豚肉 (0.9mg)
    • 玄米 (0.41mg)
    • 全粒粉小麦 (0.34mg)
    • 大豆 (0.88mg)
    • えんどう豆 (0.72mg)
    • 枝豆 (0.31mg)
    • うなぎ (0.75mg)
    • インスタントラーメン (0.23mg)
    • 大根ぬか漬け (0.33mg)

    それぞれ可食部100g中に含まれるおよその含有量ですが、部位や状態、加工・調理方法等により変動します。

    ビタミンB1を豊富に含む食品は豚肉、全粒穀物、豆類が代表的です。

    1970年代にはインスタントラーメンの常食が原因と考えられる脚気が社会問題となりました。これをきっかけに多くのメーカーが栄養強化のためにビタミンB1を添加するようになったという背景があります。

    また、大根そのものにはビタミンB1は少なく、可食部100gあたり約0.02mg程度とされています。

    一方、ぬか床にはビタミンB1が豊富に含まれており、ぬか漬けにすることで野菜に吸収され、生の大根と比較してビタミンB1が約10〜16倍以上に増加すると報告されています。

    ビタミンB1を効率よく摂取する方法

    【1】精製されていない食品を選ぶ

    白米 → 玄米
    食パン → 全粒粉

    【2】アルコールを控えめに

    アルコールの代謝にはビタミンB1が多く消費されてしまいます。

    【3】水や加熱で失われることを避ける

    ビタミンB1は水溶性ビタミンなので、水に溶けていきます。

    さらに、お湯で煮たり茹でたりの加熱調理でより失われやすくなります。沸騰したお湯で長時間加熱すると分解や溶出が進みやすくなります。

    汁ごと飲めるスープ等を程よく加熱調理等すれば効率よく摂取できます。

    【4】アリシンと一緒に摂取する

    ニンニク、玉ねぎ、ニラ等に含まれるアリシンと一緒に摂取することでビタミンB1の吸収率が高まるとされています。

    豚肉と一緒に、生姜焼き、野菜炒め、豚汁等の料理を作ることで効率的な栄養摂取に期待できます。

    ③ビタミンB1欠乏症・過剰症

    欠乏症

    不足すると以下の症状が起こることがあります。

    • 疲労感
    • 食欲不振
    • 手足のしびれ
    • むくみ
    • 動悸
    • 意識障害

    さらにビタミンB1不足が進むと「脚気」となり、心不全等の重篤な症状から命に関わるケースもあります。

    過剰症

    ビタミンB1は水溶性ビタミンであり、通常の食事摂取で過剰症が問題になることはほとんどありませんし、過剰摂取したとしても、余った分は尿中に排出されます。

    一部では頭痛、不眠、動悸、皮膚のかゆみなどが報告された例もありますが、稀です。

    サプリメントを使用する場合は、用法・用量を守ることが大切です。

    ➃脚気の歴史

    江戸時代

    当時は江戸では白米中心の食生活で、おかずは一汁一菜、もしくは二菜というような栄養の偏りが多く見られ、それにより脚気が流行し、「江戸わずらい」と呼ばれていました。

    脚気を発症した人が地方に戻り、療養すると症状が治まることが多かったため、江戸という土地そのものが病気の原因と考えられていたそうです。

    当時は豚や牛を食べる食肉の文化は乏しく、江戸では白米が主食として広く普及していましたが、地方では白米はぜいたく品で、米に麦、雑穀、芋などを混ぜてかさ増しした「かて飯」が一般的な主食でした。

    明治時代

    この頃になると、さらに白米は普及し、軍隊や一般市民にまで広がっており、脚気は結核と並ぶ二大国民病とされていました。

    日清・日露戦争では多くの兵士が、戦死でなく脚気で命を落とすことが多かったのです。

    海軍軍医総監で「ビタミンの父」とも呼ばれる高木兼寛は、脚気は栄養不足説を唱え、食事を改善し、脚気にかかる兵士を激減させました。ここから海軍カレーが発祥したとされています。

    対照的に陸軍軍医総監で文豪の森鴎外は、当時の医学では有力と考えられていた細菌説を主張したことから、脚気により多くの兵士を亡くしてしまいました。

    後の1910年(明治43年)に鈴木梅太郎がオリザニン(ビタミンB1)を発見し、脚気の原因がビタミンB1不足であることを解明しました。

    ⑤ビタミンB1の処方薬と臨床での使われ方

    ビタミンB1製剤は、欠乏症の治療だけでなく、神経症状や消耗性疾患など、幅広い臨床場面で補助的に使用されています。

    【1】脚気・末梢神経障害

    ビタミンB1欠乏による代表的な症状で、手足のしびれや感覚異常がみられます。

    臨床では、以下のビタミンB1製剤が内服または注射で使用されます。

    ・チアミン塩化物塩酸塩注射液(メタボリン注)

    ・フルスルチアミン(アリナミンF糖衣錠)

    【2】アルコール依存症・ウェルニッケ脳症

    アルコール代謝によりビタミンB1は著しく消費されます。

    慢性的なアルコール多飲や、食事を摂らずに飲酒を続けることで栄養失調となり、ウェルニッケ脳症を発症することがあります。

    緊急で注射によるビタミンB1投与が行われますが、ブドウ糖投与より先にビタミンB1を投与することが重要とされています。

    ビタミンB1が不足した状態でブドウ糖を先に投与すると、ピルビン酸の酸化的脱炭酸反応が進まず、アセチルCo-Aが生成できなくなります。反応が止まってしまったピルビン酸は乳酸に変換され、乳酸アシドーシスとなり、ウェルニッケ脳症を悪化させる可能性があります。

    【3】高カロリー輸液(TPN)

    点滴栄養では糖質代謝が亢進するため、ビタミンB1を併用しないと、アルコール依存症やウェルニッケ脳症と同様の機序で糖代謝が滞り、乳酸アシドーシスを起こす危険があります。

    そのため、高カロリー輸液では原則としてビタミンB1が併用されます。

    【4】妊娠悪阻との関係

    重度のつわりで食事が十分に取れない場合、ビタミンB1欠乏を起こすことがあります。

    そのため、点滴などでビタミンB1を補充されるケースがあります。

    【5】痛みに対する補助療法

    整形外科や内科では、肩や腰の痛み、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、帯状疱疹後神経痛等の補助療法としてフルスルチアミン(アリナミンF糖衣錠)が処方されることがあります。

    ⑥ まとめ

    ビタミンB1の糖質代謝とダイエットの関係は?

    結論から言うと、ビタミンB1は「脂肪を燃やす魔法のビタミン」ではないので、ダイエット効果に対して過度に期待しすぎることはしない方がいいかもしれません。

    ただ、ビタミンB1が不足すると、体の中では次のような変化が起こりやすくなります。

    • 代謝が落ちる
    • 疲れやすく、体を動かす気力が出ない


    その結果、活動量が減り、太りやすい体の状態を招いてしまうことがあります。


    ビタミンB1は派手さのない栄養素ですが、例えるなら「体のエンジンオイル」のような存在です。

    オイルが不足した車が本来の性能を発揮できないように、ビタミンB1が不足した体では、エネルギー代謝もスムーズに回りません。

    疲れやすい方、甘いものやお酒をよく摂る方は、まずはビタミンB1が不足していないかを意識してみてください。

    「燃やす」前に、エネルギーを正しく回せる体を整えることが、健康への第一歩です。