在宅医療について調べていると、入居している施設や利用している介護サービスによって、薬剤師が訪問できるのか、居宅療養管理指導を算定できるのかが異なることに気づきます。
居宅療養管理指導を算定できない施設は?
何を基準に判断したらいいの?
なんて思ったことありませんか?
高齢者施設にはさまざまな種類があり、さらに「暮らす場所」と「通う場所」では、薬剤師の関わり方も異なります。
そこで今回は、高齢者施設・住まい・通所介護サービスの違いを整理しながら、薬剤師が在宅対応できるか判断するためのポイントを分かりやすく解説します。
①薬剤師が施設在宅で迷いやすい理由
薬剤師が施設への訪問や居宅療養管理指導について迷いやすい理由の一つが、高齢者が利用する施設やサービスによって、薬剤師の関わり方が異なるからです。
高齢者が生活する場所には、特養や有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、さまざまな種類があります。
一方、デイサービスやデイケアは、基本的に自宅から施設へ通って利用するサービスです。
そのため、薬剤師が在宅対応できるかを考えるときは……
「その人は、そこで生活しているのか?それとも、そこへ通っているのか?を区別することが重要です。」
②高齢者施設・住まい・通所介護サービスの違い
高齢者が利用する施設や介護サービスには、さまざまな種類があります。
まずは、「そこで生活する場所」と「自宅から通って利用する場所」に分けて考えると、それぞれの違いが整理しやすくなります。
ここでは、薬剤師が在宅対応を考えるうえで知っておきたい施設・サービスについて、特徴や薬剤師の関わり方、居宅療養管理指導のポイントを見ていきます。
【生活する場所】
特別養護老人ホーム(特養)
・どんな場所?
入居条件は原則として要介護3以上で、常時介護が必要な高齢者を対象とし、看取りに対応する施設もあります。
定員29人以下の「地域密着型」と、定員30人以上の「広域型」があります。
・薬局薬剤師との関わり
薬局の薬剤師が施設を訪問し、入居者の薬を届けたり、服薬状況を確認したりすることがあります。
医療保険による「服薬管理指導料3」や「施設連携加算」を算定可能です。
・居宅療養管理指導
特養は介護保険施設であり、居宅療養管理指導の対象となる「居宅」には含まれないため、原則として居宅療養管理指導は算定不可です。
例外として、末期がんの患者さんには医療保険による在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定が可能です。
介護老人保健施設(老健)
・どんな場所?
病院での治療を終えた高齢者などが、数ヶ月の入所期間の間に在宅復帰を目指し、リハビリテーションや必要な医療・介護を受けながら生活する施設です。
・薬局薬剤師との関わり
老健では施設内の医師・薬剤師が薬剤管理を行うため、外部の薬局薬剤師が関わるケースは限定的です。
一部の専門的な薬学的管理が必要な薬剤では、外部の医師による処方箋が発行され、外部の薬局薬剤師が薬剤を持参して訪問する場合があり、その際は「服薬管理指導料3」を算定できることがあります。
・居宅療養管理指導
老健は「介護保険施設」であるため、原則として居宅療養管理指導は算定不可です。
介護医療院
・どんな場所?
長期療養が必要な要介護高齢者に対して、医療と介護を提供する施設です。
喀痰(かくたん)吸引や経管栄養などが必要な方も受け入れ可能です。
・薬局薬剤師との関わり
介護医療院では施設内の医師・薬剤師が薬剤管理を行うため、外部の薬局薬剤師が関わるケースは限定的です。
一部の専門的な薬学的管理が必要な薬剤では、外部の医師による処方箋が発行され、外部の薬局薬剤師が薬剤を持参して訪問する場合があり、その際は「服薬管理指導料3」を算定できることがあります。
・居宅療養管理指導
介護医療院は「介護保険施設」であるため、原則として居宅療養管理指導は算定不可です。
有料老人ホーム
・どんな場所?
食事・入浴・排せつなどの日常生活の支援や、介護サービスなどを受けられる施設です。
介護サービスを施設の職員が提供する「介護付き有料老人ホーム」、必要な介護は外部の訪問介護などを利用する「住宅型有料老人ホーム」、食事などの生活支援はありますが介護の提供はない「健康型有料老人ホーム」の3種類があります。
・薬局薬剤師との関わり
入居者の処方箋を受けて調剤し、施設へ薬を届けます。
必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセット、服薬状況・残薬・副作用の確認などを行います。
・居宅療養管理指導
要介護・要支援認定を受けており、通院が困難であるなどの要件を満たせば、薬局薬剤師による居宅療養管理指導が算定可能です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
・どんな場所?
介護施設ではなく、一般の賃貸住宅に近い高齢者向けの住まいです。
安否確認や生活相談などのサービスが提供され、必要な介護サービスは外部の介護事業所などを利用します。
・薬局薬剤師との関わり
入居者の処方箋を受けて調剤し、住宅へ薬を届けます。
必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセット、服薬状況・残薬・副作用の確認などを行います。
・居宅療養管理指導
要介護・要支援認定を受けており、通院が困難であるなどの要件を満たせば、薬局薬剤師による居宅療養管理指導を算定可能です。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・どんな場所?
認知症の高齢者が、少人数で共同生活を送りながら、食事や入浴などの日常生活の支援や介護を受ける施設です。
原則として、施設と同じ市区町村に住民票がある人が入居の対象となります。
入居者同士で簡単な家事を分担したり、認知症ケアのレクリエーションを行ったりしながら、できることを維持し、自立した生活を目指していくこともグループホームの特徴です。
1つの共同生活住居(1ユニット)では、原則5〜9人の利用者が、家庭的な環境の中で生活します。
・薬局薬剤師との関わり
入居者の処方箋を受けて調剤し、薬局からグループホームへ薬を届けます。
必要に応じて、一包化や服薬カレンダーへのセット、服薬状況・残薬・副作用の確認などを行い、施設の職員と連携しながら服薬をサポートします。
・居宅療養管理指導
要介護・要支援認定を受けており、通院が困難であるなどの要件を満たせば、薬局薬剤師による居宅療養管理指導を算定可能です。
生活支援ハウス
・どんな場所?
高齢などにより一人で生活することに不安がある方が、生活相談や食事の提供などの支援を受けながら生活する住まいです。
・薬局薬剤師との関わり
入居者の処方箋を受けて調剤し、必要に応じて薬を届けたり、服薬状況や残薬などを確認したりします。
・居宅療養管理指導
通院が困難であるなどの要件を満たし、居宅として取り扱われる場合には、薬局薬剤師による居宅療養管理指導を算定できることがあります。
【自宅から通って利用する場所】
通所介護(デイサービス)
・どんな場所?
自宅から通って利用する介護サービスで、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどを通じて、利用者の日常生活を支援します。
基本的には日帰りで利用し、施設で生活するためのサービスではありません。
・薬局薬剤師との関わり
基本的に薬は普段生活している自宅などに薬局から届けます。
利用者の服薬状況や残薬、副作用などを確認しながら、必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセットなどを行うこともあります。
・居宅療養管理指導
デイサービスを利用している方に対しても、自宅を訪問して要件を満たせば、居宅療養管理指導を算定できます。
ただし、デイサービスの施設に訪問して、居宅療養管理指導を算定することはできません。
居宅療養管理指導は、利用者の居宅を訪問して行うサービスだからです。
そのため、薬剤師が訪問する場所はデイサービスではなく、原則として利用者が生活している自宅になります。
通所リハビリテーション(デイケア)
・どんな場所?
自宅から通って利用する介護保険による通所リハビリテーションです。
医師の指示のもと、理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションを受け、心身の機能の維持・回復や日常生活への復帰を目指します。
病院や診療所、整形外科などの医療機関に併設されている場合もあります。
・薬局薬剤師との関わり
基本的に薬は、普段生活している自宅などに薬局から届けます。
利用者の服薬状況や残薬、副作用などを確認しながら、必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセットなどを行うこともあります。
・居宅療養管理指導
デイケアを利用している方に対しても、自宅を訪問して要件を満たせば、居宅療養管理指導を算定できます。
ただし、デイケアの施設に訪問して、居宅療養管理指導を算定することはできません。
居宅療養管理指導は利用者の居宅を訪問して行うサービスなので、薬剤師が訪問する場所は、原則として利用者が生活している自宅になります。
小規模多機能型居宅介護
・どんな場所?
住み慣れた自宅での生活を続けながら、「通い」を中心に「訪問」「泊まり」を組み合わせて利用できる介護サービスです。
利用者の状態や生活状況に合わせて、必要なサービスを柔軟に利用できることが特徴です。
・薬局薬剤師との関わり
基本的に薬は、普段生活している自宅などに薬局から届けます。
利用者の服薬状況や残薬、副作用などを確認しながら、必要に応じて一包化や服薬カレンダーへのセットなどを行い、サービスの職員とも連携して服薬をサポートします。
・居宅療養管理指導
小規模多機能型居宅介護を利用している方に対しても、自宅を訪問して要件を満たせば、居宅療養管理指導を算定できます。
ただし、「通い」で利用している施設に訪問して、居宅療養管理指導を算定することはできません。
小規模多機能型居宅介護は「通い・訪問・泊まり」を組み合わせるサービスですが、薬局薬剤師が居宅療養管理指導を行う場合は、原則として利用者が生活している自宅を訪問すると考えると分かりやすいです。
施設・サービスごとに居宅療養管理指導が算定できるか表にまとめました。

③薬剤師が在宅対応できるか判断するポイント
高齢者施設や介護サービスに関わるとき、「薬を届けてほしい」と依頼されても、その場所で居宅療養管理指導を算定できるとは限りません。
薬剤師が在宅対応できるか迷ったときは、次の5つのポイントで整理すると分かりやすくなります。
【1】その人はそこで生活しているのか?
まず確認したいのが、その場所が利用者の生活の場なのか、それとも通って利用する場所なのかということです。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは、利用者がそこで生活しているため、居宅療養管理指導の対象となる場合があります。
一方、デイサービスやデイケアは自宅から通って利用するサービスなので、施設に訪問して居宅療養管理指導を算定することはできません。
「住んでいる場所」と「通っている場所」を最初に区別することが重要です。
【2】その場所は居宅療養管理指導の対象となるのか?
「そこで生活しているから、居宅療養管理指導を算定できる」とは限りません。
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設では、原則として居宅療養管理指導を算定できません。
一方、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどでは、一定の要件を満たせば算定できます。
そのため、「生活の場かどうか」だけでなく、「その場所が居宅療養管理指導の対象となるのか」まで確認する必要があります。
【3】施設側と薬の管理・服薬方法についてどう連携するのか?
在宅対応では、薬を届けるだけでなく、「誰が、いつ、どのように薬を管理して服用するのか」を施設側と確認することも重要です。
例えば、一包化や服薬カレンダーへのセット、服薬状況・残薬の確認など、利用者の状態や施設の体制に合わせて薬の管理方法を検討します。
ケアマネジャー、看護師、各フロアの責任者・担当者など、多職種の方々と患者さんの情報を共有し、治療を円滑に進められるよう連携することが重要です。
④まとめ
高齢者施設への在宅対応では、施設の種類によって居宅療養管理指導の算定可否が異なるため、まずは利用者がどこで生活しているのか、その場所で算定できるのかを確認することが大切です。
また、実際に薬を届ける際には、施設ごとに薬の管理方法やセット方法が異なることがあります。
例えば、一包化した薬のラインの色分け、ホッチキスで止める順番、薬をセットする向きや並べ方など、施設独自のルールが決められている場合があります。
「いつもの施設と同じやり方」で対応するのではなく、施設ごとのルールを事前に確認し、その施設に合った方法で薬を準備することも、スムーズな服薬管理につながります。
薬剤師が施設在宅に関わる際は、算定できるかどうかだけでなく、施設のスタッフと細かなルールまで共有し、利用者が安全に薬を服用できる環境を整えることが重要です。

















































